株式会社nana music 代表取締役社長 文原 明臣さま

株式会社nana music

代表取締役社長 文原 明臣さま

音楽コラボアプリ「nana」などを展開する株式会社nana music(以下、nana music)。
「nana」は世界累計1000万ダウンロードを誇り、若い世代を中心に世界中で音楽投稿プラットフォームとして愛されています。

2012年にローンチした同アプリは、10年目を迎え、フルリニューアルプロジェクトが進行中です。ベンチャー広報では、世の中に対して発信する「『nana』とは何者か」というキーメッセージ以前の言語化から、「メッセージをどう伝え続けていくか」を示す広報PRの戦略設計~実行まで一気通貫でご支援しています。

広報活動で得られた成果や、弊社のサービスについてnana music 代表取締役社長の文原さまにお話を伺いました。

アドバイスだけでは物足りなかった

サービス立ち上げの当初から、いかに自然に「nana」を知ってもらい、新規ユーザーの獲得に繋げていくかを考えた時に、広報PRでのコミュニケーションを大切にしてきました。
基本的に我々ベンチャーは、創業したての時などは、マーケティングや広告等にかけられる予算がないので、特に広報PRは重要になります。

我々が広報PRに注力してきた経緯としては、2014年に広報担当の社員を採用しました。その社員は広報未経験だったので、外部の方にアドバイスをお願いしながら、企画やネタを作ってとにかくシンプルに発信する量を増やすことにこだわり、情報を出し続けていました。

ただ、その社員が2017年に退職したため、そのタイミングで社内に広報担当者がいなくなりました。
広報機能の再強化のため、広報の実績がある方を探すと、コンサルティングやプレスリリースの添削は頼めても「そもそも会社として何を発信するべきか」というところから考えて、一緒に走って、話し合えて、メディアさんに対して実際にアクションをとるところまでは難しいんですよね。
でも、そこがすごく重要だと考えていました。ですので、アドバイスをもらうだけのパートナーでは物足りなかったんです。

未経験者を育てるのは当時の僕たちの体力的には厳しかったですし、誰かが兼務するというのも難しく、こうした背景から2017年以降は広報がいないという状態でした。
広報のプロで、しっかりとコミットしてくれるパートナーを探し続けていた中で、役員の川端が見つけてきたのがベンチャー広報でした。

広報PRの知見・マスコミ人脈+同じ目線で企画実行していく理想の形がベンチャー広報にはあった

例えば、情報の羅列としてプレスリリースを出すだけであれば、いろんな委託先があります。
極論を言えば、そこだけだったら頼まなくても内製化はできます。

僕たちが広報のパートナーに求めているのは、「そもそもどういうメディアに、どういう方針や切り口で情報を出していくのか」や、「メディアとの関係性(メディアへの理解)」です。それって一朝一夕にできるものではないじゃないですか。

広報は、世の中に対してのメッセージの定義から、それをどう伝えていくかの戦略設計、果ては各メディアさんとのリレーションシップ形成まで幅広い業務があります。
これらを「外部のアドバイザー」ではなく、社内に深く入り込んでもらって「『nana』というプロダクトの価値はなにか?それをより社会に伝えていくにはどうすればいいか?」を一緒に考えて、実行していってもらえるパートナーを探していたんです。

ベンチャー広報は、コンサルタントの方が日々メディアの方々との関係づくりをされていますし、本当に自分たちとある意味同じ目線といいますか、外部ではなく、nana musicの中に立っていただいて、一緒にどうしていくのが良いかを、知見に基づいて設計の部分から実行の部分までお願いできるので、まさしく探していた理想の形に近いですね。

「このメディアに対して、こういう切り口でアプローチしていこうと思ってますけどどうですか?」と、ご提案していただけますし、あまり関係のなさそうなメディアであっても、なぜそのメディアにアプローチするのかを明確に話していただけるので、信頼しています。
我々が望んでいた役割をきちんと理解していただけて、取り組んでいただけているなと感じています。

広報は「Who are we?」を適切に伝え続けること

「広報」は、正直なところ定義がなかなか難しく、成果をどう評価するかも難しいです。
プレスリリースを出す、と捉えている方もいれば、負の対応・炎上やトラブルの際の対応がメインだと捉えている方もいると思います。

でも僕は、「我々は何者か=Who are we?」を社会に適切な方法で伝えていくことが広報だと根本的に考えています。
Who are we? が結局のところ、最大のブランディングなので、ここの定義と一貫した発信の継続がブランドを作る。
ですので経営にとって、広報は非常に重要な役割だと考えています。

広報に取り組む中での悩みでいえば、マーケティングと比べて、どう評価するのかについて明確な評価軸を持てていないことが挙げられます。そこに葛藤がないといえば嘘にはなりますね。

マーケティングであれば、「これがうちのサービスです!見て!」と、宣伝をして、認知を獲得する。
そこからユーザーが獲得できて、コミュニティの分母が増えて、サービスが盛り上がって、横を見ればみんなが「nana」を使っているという状態が作れれば、サービスはさらに人が人を呼びます。
事業の成長に直結していくので、基本的にマーケの方が目先の優先度は高いですね。

けれども、「我々は何者か」というコミュニケーションは、積み上がっていくもので、一朝一夕ではできない。しかも自社で宣伝するだけの構造では、どこまでいっても押し売りになってしまいます。

第三者から、「このサービス、いいんだよ」って言われることは、そうした意味で非常に重要です。「ファンを作る」とは、ユーザーの数を増やすというよりも、nana music、「nana」というサービスに対して熱量が高い人を増やすということだと考えています。なので、サービスやプロダクトに対しての愛に向き合った方が良いと思いますし、自分たちからのメッセージに世の中が何かしらポジティブな気持ちを持ってくれることが大切だと思います。

広報活動で「我々は何者か」ということを、きちんと定義して発信を積み重ねていって、一貫してビジョンに基づいた行動を取り続けることが、そういったユーザーの感情の深さ、信頼と愛情に繋がっていくと思っています。

そういう意味で、広報は評価の仕方が難しいですし、ビジネス的な数字や結果で見ると、優先度は確かに低く見積られがちですが、ずっとやり続けなくちゃいけないですし、やり続けるものであって、どんどん積み上がっていくもの。継続してやるべきだと捉えています。

新しい概念を一緒に築いていく

nana musicがやっていることは、基本的には新しい概念づくりです。

「スマホだけで自分の歌を歌って発信する。」
それはテクノロジーが進化する中で、スマホが当たり前になってきた時に、一番先に波に乗れたから、ここまで来られた部分があります。
今までだったら、ものづくり、クリエイティブとなると、PCベースでやっていたことが、スマートフォンだけでもできるようになりました。

それに対して、「もうスマホだけでも、こんなに作れるんだよ」と、「nana」にはカウンターみたいな特長がありました。
でも、ローンチから10年経った今ではWeb3.0やメタバースと呼ばれるものをはじめ、さらにテクノロジーが進化しています。

この環境下で、サービスは現代のニーズに追いつき、追い越し続ける必要がある。これが今の課題です。
ローンチして盛り上がって…を繰り返す中でも、新しい技術やサービスがどんどん出てきているので、その中でどう存在感を出していくかは常に問い続けなければなりません。

自分たちが自信を持っておすすめし続けられるプロダクト開発をしたいというのは感じています。当時は良かった機能でも、今の時代の波に強く乗れていないところもある。

今リニューアルに取り組んでいるのも、ここから更に数年後をイメージし時代に合った価値を提供するためです。改めてより多くの人たちに利用してもらうために、自分たちの武器を再定義しているタイミングです。
なので、今発信できるネタは弱いとも思います。

しかし、これからやろうとしているものは、僕らも自信を持って「人々の役に立てるはずです」「新しい価値があります」と言えます。
そこを訴えていけば、理解してもらえて、その価値を感じる人たちがどんどん増えていくと思います。

そのため、新しい概念、言葉を作っていく必要がありますし、加えて適切なチャネルで発信し続けなければなりません。
どういう層から僕たちのメッセージを届けていけばいいかや、どうメディアを巻き込んでいくべきか。こういう切り口ならトレンドに合うのではないか、などの設計が8割です。
ここからのフルリニューアルに向けての広報PR設計を、ベンチャー広報には更に期待しています。