スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。
辞書で調べると「広報」「PR」「プロモーション」「広告」「マーケティング」それぞれの意味が書かれています。ChatGPTに聞けば、それぞれの違いを答えてくれるかもしれません。
そして、ネットで色々な記事を読むとそれぞれの単語の意味に微妙な違いがあることにも気付くはずです。これらの言葉は、発信する人や企業のスタンスによって意味合いが変わる事もあります。
今回、私がお伝えするのはあくまで「広報担当者が実務を行う上で把握しておくべき違い」です。
皆さんは学者ではないので、この言葉の意味を厳密に掘り下げ続ける必要は無いと思います。ただ、広報担当として実務を行う上で、これらの概念の違いを理解しておくのは、とても有益です。
「PR」と「マーケティング」の違い
5つの中で真っ先に理解すべきは「PR」と「マーケティング」の違いです。
この2つは「実施する最終目的」が異なります。
PRは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略で、様々なステークホルダーからの信頼を向上させる事が最も大きな目的です。
ステークホルダーとの関係性構築も目的ではあるんですが「何のために関係性を構築する必要があるのか?」ともう一段深く潜ると、そこにある最終目的は”信頼の向上”になります。
一方、マーケティングの目的は”売上の向上”です。近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーは「マーケティングとは顧客のニーズに応えて利益を上げることである」と定義しています。
また、ドラッカーは「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。顧客のニーズを理解し、製品やサービスを顧客に合わせることで自然に商品が売れる仕組みを作ることである。」と言っています。
ここで注目すべきはそれぞれに「利益」「売れる」という概念が入っていることです。これは詰まるところ、売上の向上がマーケティングの最終目的であるということを示しています。
なので、広報担当者がまず理解しないといけないのは、企業が行う攻めの一手として”信頼向上”を目的とした「PR」と、”売上向上”を目的とした「マーケティング」、この2つがあるという事です。
「PR」と「広報」の違い
海外から入ってきたPublic Relations(パブリックリレーションズ)という言葉の日本語訳が「広報」です。では「PR」と「広報」が完全にイコールかというと、私は少し違うと思っています。
信頼向上を最終目的とし、ステークホルダーと良い関係性を作ること。これがPR。広報もベースは同じですが、違うのは関係性構築を”こちらから情報発信する事を起点として行う”ところです。
例えば、プレスリリースを出したり、Webサイトを更新したり、こちらから何か情報を出す事で関係性構築を図る活動、これが広報になります。つまり、PRという大きなフォルダの中に広報が含まれているというイメージです。
「プロモーション」と「マーケティング」の違い
同じようにプロモーションはマーケティングという大きなフォルダの中に入ります。
マーケティングもプロモーションも”売上向上”が最終目的である事に変わりはありませんが、プロモーションは、売上向上のために、ターゲットに購買意欲を喚起する工程のことを指します。
一方でマーケティングは、「マーケティングの4P」という言葉の通り、販促(promotion)だけでなく、製品 (Product)、価格 (Price)、流通 (Place)を含めて、何をいくらで、どこで、どのように売るか、という”売れる仕組み”を作る活動全般のことです。
これがマーケティングとプロモーションの違いになります。
最後の1つ「広告」とは?
ここまでで「PR」「広報」「マーケティング」「プロモーション」の4つは理解いただけたと思います。
残る1つ「広告」ですが、こちらはめちゃくちゃシンプルな定義です。PRでも、広報でも、マーケティングでも、プロモーションでも、どんな目的でも工程でも構いませんが、こちらからお金を払って意図を持って仕掛けたものは全て広告です。
例えば、テレビCM、WEB上で広告を出す、お金を払って誰かに紹介記事を書いてもらう等も広告と言えます。
お金を支払うものが「広告」、支払わないのは「広報」という考えもひとつの視点からの見え方では正しいのですが、もう少し俯瞰で見てみると、広報は「信頼向上を目的として、こちらから情報発信して行うもの」で、広告は「目的はさておき、要はお金を払って、信頼または売上どちらかの向上を図るもの」という事になります。
この5つの概念を知る事のメリット
この5つの概念を知る事のメリットを最後にお伝えします。それは、会社の中で行っているあらゆる「攻めの一手」を全て俯瞰で見る事ができるようになる、という事です。
これは私の持論なんですが、広報担当だからといって会社や事業の売上に無頓着ではダメだと思います。
広報担当はPRという大きなフォルダの中の一部を担当しているわけですが、マーケティングというもう1つの攻めの一手にも常にアンテナを張り、頭の中で目的を整理する癖をつけることはとても重要です。
また、このように俯瞰で見て、整理をする癖がつけば、会社としてどういう戦略・戦術を行うべきかが見えるようになります。それはもう広報担当という役割を超えて、経営視点で「これはこうすべき」という判断ができるということです。
こういう視点を持った広報担当は経営陣からめちゃくちゃ重宝されますし、スタートアップやベンチャー企業のCMOとして求められる視点って要はこれだったりします。
























