媒体研究~日本経済新聞編~
新人広報パーソンのための広報いろは。

媒体研究~日本経済新聞編~

36年のベテラン広報PRパーソンが伝授!

企業の広報PRパーソンにとって、まず報道してもらいたいメディアとして頭に浮かぶのが、日本経済新聞社の各媒体かもしれません。実際に大企業はもちろん、中堅、スタートアップに至るまで、多くの企業経営者が報道しもらいたがりますし、世の中に与える影響も非常に大きいと思います。

「経済紙のリーディングペーパー」

本稿では、経済紙のリーディングペーパーである日本経済新聞について解説します。大手企業からベンチャーやスタートアップ企業の経営者まで、報道してもらいたいと希望する重要媒体です。筆者も日々、広報PRパーソンの方々から、この媒体の攻略法を尋ねられます。

日本経済新聞は、新聞名の通り日本経済新聞社が発行する全国紙唯一の経済紙。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞といった一般紙と比べると、株価欄をはじめ、経済や産業分野の情報が多いのが特徴です。

その他、日本経済新聞社の媒体は、日経産業新聞、日経ヴェリタス、日経MJ、NIKKEI Financial、Nikkei Asiaなど。また、日経電子版など多くのオンラインメディアも展開しています。

日本経新聞社の所在地は、東京と大阪の2本社制。全国に名古屋、西部、札幌、神戸、京都の5つの支社があります。国外拠点は、世界で33カ所、記者や現地スタッフは約160人と、日本の新聞社では最大規模です。

日本経済新聞社、各媒体の特徴

●日本経済新聞(日経新聞)
皆さんもご存じの通り、影響力が絶大な経済紙です。多くの名物コーナーがあります。企業のトップは、まずは「交遊抄」に、次に夕刊の「人間発見」、最後は「私の履歴書」に登場したいとよく言われるのではないでしょうか。

産業別に専門の記者を配置し、手厚く企業報道を行う媒体です。地域面も充実していて、地方企業であれば地元支局を狙うことで、報道されるチャンスが生まれます。また、ベンチャー・スタートアップ企業情報は、「スタートアップ面」(毎週水曜)が充実しています。

最近は、日経電子版に注力して“デジタルファースト”を掲げ、スクープはもちろんストレートニュースも、昼夜を問わず電子版で報道しています。ちなみに、スクープのジャンルとして、社長人事、海外進出、企業の合併、倒産などを、記者は意識しているようです。

●日経産業新聞
様々な企業の動きや、市場の最新トレンドを紹介する新聞です。最先端技術の開発や新しい製品・サービス、人事戦略など、ミクロニュースが豊富です。筆者の経験では、当日の報道量や紙面スペースの都合により日経新聞で報道できない情報が、よく日経産業新聞に回されると感じています。

●日経MJ
流通とマーケティングの専門紙です。毎週月、水、金曜日発行。衣食住遊など、生活に身近な記事が目立ちます。1971年、日経流通新聞が創刊。2001年の30周年を迎えるに当たり日経MJへ刷新されました。2021年で創刊50周年、日経MJに改称してからも20年経ったことになります。

MJは「マーケティングジャーナル」の略で、消費者がいまどう動いているか、企業は消費者とどのように関わろうとしているのかなど、生活、消費、サービス産業全般をカバー。ビジネスの動向、消費トレンドを紹介しています。

●日経ヴェリタス
金融情報、投資に関する専門紙です。資産運用ビギナーから、投資のプロまでが対象読者です。

編集体制について

日経新聞は経済専門紙として、朝日新聞や読売新聞などの一般紙があまり取り上げない、カバーしていない企業の動きを手厚く報道します。企業情報をストレートに伝えるには、日経新聞の方が向いている面があります。

ただ、日経新聞の記者は、やはり経営規模の大きい企業や上場企業を優先します。ベンチャーやスタートアップ企業にとって、日経新聞に取材してもらうには、それなりの工夫と努力が必要でしょう。

まずは、編集体制を知ることが重要です。2021年4月には、大きな組織改編がありました。東京本社編集局の各部・センターが廃止され、以下のような「ユニット」となりました。主な部署は次の通りです。

◎ビジネス報道ユニット(旧・企業報道部)
メーカーや小売り、サービス業など、企業全般の動向を取材する部署。このユニットは、「グローバル基幹産業担当」「テック担当」「調査・分析担当」「グローバル消費産業担当」「デジタル・新興企業担当」の5つに分かれます。企業広報としては、こちらのユニットへの情報提供が効果的です。

◎社会・調査報道ユニット(旧・社会部)
担当記者は、社会面に記事を書いています。毎日2ページある社会面をカバーし、世の中のトレンドも取り上げます。

◎生活情報ユニット(旧・生活情報部)
身近な生活に関わる情報をカバーしています。日経の生活情報記事は、人気が根強いようです。それもあってか、2017年3月から大きくテコ入れしてきました。

まず、日曜朝刊で、16ページにも及ぶ特別版「NIKKEI The STYLE」が始まりました。ここでは、旅、グルメ、ファッション、文化・芸術などのライフスタイル情報を紹介しています。また、土曜の別刷り紙面「土曜日プラス1」では、人気の「何でもランキング」が2ページに増えました。このほか、生活に役立つ実用情報や新製品情報が多くあります。

ユニット内には女性面担当もいます。こちらは、働く女性にまつわる情報を発信。この分野も力を入れており、女性面は、毎週月曜日の朝刊に1ページ掲載されています。働く女性のキャリア形成、育休の取組など、女性を応援する記事が満載です。

その他は、政策報道ユニット(旧:政治部)、金融市場ユニット(旧:証券部)。地域報道センター(旧:地方部)、国際報道センター(旧・国際アジア部)といったユニットなどがあります。

攻略法のポイントは

言うまでもありませんが、各媒体の編集特性や傾向と各紙面・コーナーのリサーチが重要です。特に、自社に近い企業規模と関連業種の企業報道を知れば、近い紙面が分かってきます。各媒体とも幸いにも署名記事が多く、担当記者も確認できます。また記者の関心事・企業も追跡可能です。つまり。記者の行動原理を知ることが何よりも必要となります。

皆さんに、日経攻略法でヒントとなる書籍を紹介します。『メディアを動かす広報術』(松林薫著・宣伝会議発行)です。著者は、日経新聞の元記者。同書では、企業広報が知っておくべき広報術を、記者経験から分かりやすく解説しています。広報歴の浅い方でも容易に理解でき、自社の広報活動にも活かせるでしょう。

オンラインセミナー開催のお知らせ

『メディアを動かす広報術』の著者である松林薫様が、ベンチャー広報主催のオンラインセミナーに登壇頂けることになりました。

松林様は日本経済新聞社に入社後、経済解説部、経済部、大阪経済部などで、金融・証券、社会保障(年金、少子化)、エネルギー、財界などを担当。BSジャパン「日経みんなの経済教室」に室長役で出演。2014年よりジャーナリストに。また、2019年には社会情報大学院大学客員教授に就任しています。現在は、報道イノベーション研究所 代表取締役です。

著書は『メディアを動かす広報術』(宣伝会議・2021年)、『迷わず書ける記者式文章術―プロが実践する4つのパターン』(慶応義塾大学出版会・2018年)、『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』(晶文社・2017年)、『新聞の正しい読み方―情報のプロはこう読んでいる!』(NTT出版・2016年)など、多数あります。

オンラインセミナーでは、日経新聞の編集方針・体制や広報歴の浅い方でも理解できる広報術について解説頂きます。詳細は、後日、弊社ホームページにてお知らせします。メールマガジン「広報PRラボジャーナル」でも告知しますので、まだ購読されていない方は、ぜひこちらから登録(無料)ください。

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記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴36年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

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【媒体研究】4大ビジネス誌を攻略する
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