「あの時代」に広報がいたら、日本の歴史は大きく違っていた?
広報PR・おすすめの一冊

「あの時代」に広報がいたら、日本の歴史は大きく違っていた?

報道発表後に新たな情報が明らかになり大炎上。我々が生きる現代社会では、広報対応ひとつで、事態は良い方向にも悪い方向にも動きます。そんな中、あらかじめ「こうなること」がわかっていればもっと適切な対応が取れたのに、と頭を抱えた経験がある広報担当者は多いのではないでしょうか?

本書では、既に結果が知れ渡っている歴史的事象に「もし」を付け加え、「もしこの時代に広報がいたら」どんなプレスリリースを発表したのか、という設定でそのノウハウと効果についてわかりやすく紹介しています。

おすすめ書籍

書籍:もし幕末に広報がいたら 「大政奉還」のプレスリリース書いてみた
著者:鈴木正義(NEC パーソナルコンピュータ、レノボ・ジャパン広報部長)
監修:金谷俊一郎(歴史コメンテーター・東進ハイスクール日本史講師)
発行元:日経BP

著者について

鈴木正義は、NECパーソナルコンピュータ、レノボ・ジャパン広報部長。鈴鹿サーキットランド(現モビリティランド)、古館プロジェクト、メンター・グラフィックスなどを経て、2004年よりアップルにて本格的に広報専門職のキャリアをスタート。

Final Cut ProやiPhoneの広報を担当。2011年レノボと日本電気の合弁事業NECパーソナルコンピュータの設立を機にレノボ・ジャパン広報も兼務。

書籍概要

本書の中で、広報担当者に特におすすめしたいのは下記の章です。

1章-05 顧客プライバシー保護が甘かった「池田屋事件」
不祥事後のダメージコントロールはどうすべきか

2章-16 「大政奉還」の発表で幕府広報の葛藤を追体験
マスコミの反応を完璧に読み切れるか

3章‐20 源頼朝が編み出したエンゲージメント強化策
「御恩と奉公」の是非について考えてみた

情報漏洩で殺人事件 池田屋事件で学ぶ危機管理広報

広報の重要な役割の1つとして、企業が製品事故や不祥事といった危機に直面した際の「危機管理広報」があります。なにか不祥事や事件があった場合、企業の社会的ダメージを最小限に抑えられるか、大炎上に発展するかは広報対応の是非で変わります。

常に権力者同士が抗争を繰り返してきた戦乱の世では、広報のリスクマネジメント術はどこまで通用するのでしょうか。

幕末に京都で起こった池田屋事件は、宿の立場で考えると「宿泊客の情報漏洩があり、殺人事件が発生した」という、現代であれば取返しのつかない事態です。今、ホテルや旅館で発生したら、この後どのように世間に対して広報対応をすべきか。

本書の「危機管理広報の5大原則」にはその答えがあります。企業の不祥事に直面した時、広報担当者は一度冷静になり、まずは基本に立ち戻ることが一番重要であり、基本に則って迅速に対応することが最短の解決策であるという気づきを得ることができました。

大政奉還は世論を動かすための社外広報だった?

企業がなにか新しい制度を立ち上げるとき、これを社内外へ周知させることも広報の重要な役割にです。ここでのコミュニケーションによっては反対勢力を納得させ、企業のイメージダウンも避けることができます。歴史上でも時代が移り変わる根底には必ず制度改革がありました。

江戸幕府が大政奉還をした目的は、討幕ムードになっている世間に対して、幕府として生き残るために「幕府VS新政府」という構造を「新政府を支える幕府(という名目で実権を握り続ける)」という構造に切り替えたかったのではと著書では想定しています。

この歴史的大転換期に、討幕ムードに傾きつつある世論を一転して幕府の味方につけるためには「マスコミの反応を先読みする広報戦略が重要である」とも述べています。

マスコミ関係者なら、大政奉還を発表した後の幕府の次なるメッセージは注目度が高くなることは想像に難くないでしょう。その中でマスコミから矢継ぎ早に来るであろう質問に幕府側の広報担当者が用意すべきは、「マスコミからのFAQ対策」です。

一つ間違えれば討幕ムードに拍車をかけるリスクと隣り合わせの状態で、幕府側の広報担当者が用意するFAQで最も重要なのはなにか?まさに幕府側の広報担当者という架空の存在を追体験することで、現代の広報業務でも活かせるヒントを得られます。

是非、現役で活躍する広報担当者は「もし私が幕府の広報PR担当者ならこうする!こう答える!」というところまで一度想像してみてください。

エンプロイヤーブランディングの秘訣は「御恩と奉公」の社内広報にあり!

企業成長という視点で「社内広報」はとても重要な役割を担っています。今は高度経済成長期のように終身雇用を信じて働いている人は少ないでしょう。そんな時代の人材流出は、担当者不在の間の補填も、新たな人材を採用・育成するにもコストがかかり、企業存続にかなりのダメージを与えます。

まさに会社と社員とのエンゲージメント強化は、企業成長に直結するといえます。実はこの考え方を実行した歴史的人物がいました。それが源頼朝です。

ここで例にあげられているのは、源頼朝が構築した「御恩と奉公」というシステムです。鎌倉幕府を現代で言う「会社」、奉公する武家人を「社員」と位置づけ、幕府のために命を懸けて戦ってくれた武家人(=労働)への優遇処置(=報酬・名誉・やりがい)を設定しました。

まさに、社員を会社につなぎとめ、高いモチベーションで仕事をしてもらうための「エンゲージメント強化策」です。

本書ではこの「御恩と奉公」の発表を、あくまで「武家人のことを考えた幕府の政策」とみせるためにはどんなプレスリリースにしたらよいか、という視点で書かれています。社内に対する情報発信は唯一無二「広報」でしか担えません。

まさに企業成長につながるエンプロイヤーブランディングの要は「社内広報」であると考えると、広報という仕事の重要性を再認識することができます。

まとめ

本書は、「歴史×広報」という斬新な切り口でプレスリリースの事例を42個も紹介しており、広報担当者が遭遇するであろうあらゆる場面での対応方法や情報発信の仕方など多くのメソッドが紹介されている読み応えのある内容でした。

その情報発信の裏側にある理由・根拠は何か、広報担当者がなぜそのような内容のプレスリリースを書いたのか、そこに込められている意図は何かについても詳しく説明されており、「歴史的事象に”もし”を付けてプレスリリースを書く」という一見フィクションを読んでいるような気持ちになる中で、広報として必要なスキルやノウハウを学ぶことができます。

「広報の仕事とは何か?」を具体的に知りたい広報初心者にも、一度初心に戻って「広報」という仕事と向き合いたいと思うベテランの広報PRパーソンにもお薦めしたい一冊です。

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