“紙面を持たない新聞社”である「通信社」とは
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“紙面を持たない新聞社”である「通信社」とは

~36年のベテラン広報パーソンが伝授!~

広報PRパーソンといえども、実際に記者と付き合いがない場合、「通信社」の役割や実態について、詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、報道機関に情報を提供する通信社について、その成り立ちや攻め方を紹介します。地方紙の露出を目指す方にとっては、通信社へのアプローチが“急がば回れ”かもしれません。

中小・スタートアップのためのPR会社 ベンチャー広報です。
広報PRパーソンの皆さんは、“紙面を持たない新聞社”をご存知でしょうか。
すぐに答えられた方は、メディアリテラシーが高い方です。その答えは、「通信社」です。
国内には、【共同通信社】と【時事通信社】があります。

私もPRエージェンシーに入る前は、社名さえ知りませんでした。
最近せは広報関連の専門書で知ることはできますが、なかなか通信社の記者と接点がないと詳しい事は理解できないのが現状です。
そこで今回は通信社について解説します。

「新聞社」と「通信社」の役割の違い

新聞社は自社の発行する新聞などに記事を掲載し、読者に情報を届けます。
一方、通信社は、全国の新聞社や放送局などの報道機関に記事を配信する役割を持ちます。
特に、海外や首都圏などに取材機能を持たない地方新聞社において、通信社の役割は重要です。

国内外の出来事を、新聞社や放送局などのメディアが全て取材をカバーできません。
そこで、各社が資金を出し合ってニュースを調査、取材する機関として、通信社が生まれました。

【共同通信社】と【時事通信社】とは

両社の成り立ちは、実は「同盟通信社」という1つの通信社でした。
第二次世界大戦後に分割され、社団法人の共同通信社と株式会社の時事通信社が誕生しました。

共同通信社

日本を代表する“総合国際通信社”です。
一般社団法人共同通信社は1945年に創立。社団法人では、加盟新聞社とNHKが予算を負担する組織形態になっています。

加盟社には日本経済新聞社、産業経済新聞社、毎日新聞社、東京・中日新聞、西日本新聞、NHKなど56社。
一部の記事を提供する契約社には、読売新聞、朝日新聞、各民放放送局116社。ロイターやAP通信と並び、世界を代表する通信社の1つです。

国内外の多彩なニュースを取材・編集し、NHKをはじめ地方新聞社やテレビ・ラジオ放送局、さらに海外メディアにも配信を行っています。
最近はネットを基盤とするニュースサイトやオンラインサービスにも、ニュース、写真や映像を提供しています。

共同通信には2つの組織が存在
一般社団法人と、その子会社である株式会社共同通信社の2社が存在しますが、同じ「共同通信社」の名称で存在しています。
このため、PR業界では両社を区別する必要があるときには、それぞれを「社団共同」「KK共同」と分けて呼んでいます。
株式会社共同通信社は、1972年設立。一般社団法人共同通信社の100%出資による総合情報サービス会社です。

デジタルメディアに関する取り組み
2006年にスタートしたのが、47NEWS(よんななニュース)です。
ページビュー(PV)約1億6000万/月。社会、政治、経済、国際、文化、スポーツなど18のジャンルの速報と、全国52の新聞社からの地域ニュースで、国内外の動きをタイムリーにキャッチできます。

海外ニュース網も充実していて、英語、中国語、ハングルニュースサイト、海外リスク情報のポータルサイトも運営しています。
また、KK共同でもネットメディア「OVO(オーヴォ)」を運営中です。「注目のニュース」「ブレイクしそうなコト」「話題のスポット」「知って得するマメ知識」などを中心に、消費者の生活に密着した記事が満載です。
1020万PV/月と、幅広い層が購読、特に25~44歳の女性に支持されています。

時事通信社

営利を目的とした会社法人として設立。誰にでもニュースを販売している組織です。
時事通信に加盟していれば、一般人であってもニュース速報などを受け取れます。また、食品や商品の価格推移など、専門性の高いニュース配信を強みにしています。また、共同通信からニュース配信を受けていない新聞社にもニュース配信をしています。

デジタルメディアに関する取り組み
インターネットの普及とともに急成長している事業分野です。
2000年にスタートしたのが、総合ニュースサイト「時事ドットコム」。月間1500万人以上の読者がアクセスしています。
日々のニュースに加え、国内外の情勢や社会問題にかかわるコンテンツも充実しています。PCだけでなくスマートフォンでも、ニュースチェックができます。

その他にYahoo!Japanなどのネットメディア、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、商業施設や空港、駅などのニュースボードでも文字ニュースや写真ニュースを展開し、需要の拡大に対応して動画配信サービスにも力を入れています。

通信社の攻め方のコツとは

1.どんなメディアかを知る。

この記事を読んだ後に、各社のホームページで媒体リサーチをしてみましょう。
特に「採用情報」コーナーでは、実際の部署でどのような仕事を担当しているか分かります。また記者の実名も紹介されています。

日々のテレビのニュース報道もウオッチしてみてください。
各社政治、経済分野で論客に長けた会社を代表する方々がコメンテーターで出演しています。
例えば、「報道ステーション」(テレビ朝日)では太田昌克氏(共同通信社編集委員)、後藤謙次氏(元共同通信社編集局長)、「モーニングショー」(テレビ朝日)は、田﨑史郎氏(時事通信社元解説委員長)、「バイキングモア」(フジテレビ)は、山田惠資氏(時事通信社解説委員)です。

2.通信社報道は地方支局にチャンスあり

共同通信社の支局網は、国内で札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡各支社ほか、都道府県庁所在地、主要都市に45カ所あり、海外はニューヨーク、ワシントン、ロンドン、パリ、モスクワ、北京、バンコク、カイロなど、世界主要41都市です。
時事通信社は、国内77カ所、海外28カ所の支社や総支局でカバーしています。

各社とも、地方の県や市が運営している記者クラブにはほぼ加盟し常駐しています。
私もこれまで地方企業や地方エリアの情報は、各社の支局へ情報提供しています。首都圏での情報提供よりも比較的ハードルが低い印象です。また、地方支局で報道されると、多くの加盟紙にも報道されます。つまり全国紙的な影響があり、私も地方の情報は通信社を意識して情報提供しています。

3.地方紙の定期コラムをリサーチし、本社記者へ情報提供を

本社記者は、地方紙への記事出稿を日々仕事としています。
特に共同通信の配信記事は、中日新聞、東京新聞によく掲載されます。
毎週定期的に紹介されている記事は、共同配信分が多くこちらのコラム欄をリサーチして、本社担当記者へ情報提供する方法も有効です。また、記事の最後に共同、時事とクレジットが入っているのも配信記事と判断できます。

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記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴36年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

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【媒体研究】4大ビジネス誌を攻略する
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