スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。
広報業務には、法律上の注意点が意外にたくさんあります。うっかり法律違反をしてしまうと、会社に大きなダメージを与えかねないので、注意が必要です。
大企業だと法務やコンプラの部署がチェックしてくれますが、スタートアップや中小企業の場合、そういった機能が不十分なので、広報担当自身が適切に判断する必要があります。
広報業務に関連する最低限の法律については、内容を理解しておきましょう。
景品表示法
正式名称は 「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。消費者が商品やサービスを選ぶときに、誤解を与える広告や過大な景品提供はダメですよという法律です。
広報担当が気を付けるべきは、広告・プレスリリース・Webサイト・SNS等の対外発信でこれに違反する表現をしていないか、になります。
例えば、化粧品に関する表現で「100%シワが消える」など科学的根拠が無い場合はNGです。また、健康食品で「これだけで必ず痩せる」は合理的根拠がなく これもNG。
また医薬品的効能をうたっている場合、同時に、後で説明する薬機法にも違反する可能性があります。細かいところでは不動産とかで「駅徒歩5分」と書いてあるけれど、 実際は8分以上かかる、これも厳密にはダメです。
あと、広報活動の一環として、雑誌などの媒体に読者プレゼント用の商品を提供することがあると思います。この場合も注意が必要です。抽選を伴う景品は法律で「取引価額の20倍まで、かつ最高10万円まで」と上限金額が決められています。
こういった条件を全て暗記しておく必要はありませんが「プレゼント企画には景品表示法の制限がある」という認識を持ち、正確な条件を都度確認しながら業務を進めることが重要です。
既に存在しているものを模倣・引用する事に伴う法律
これは関連する法律が複数あるのであえて一括りにしました。1つ1つの法律名称まで覚える必要はありませんが「何をやったらダメなのか」という点をしっかり把握してください。
まずは他社のロゴや商品デザインを模倣して使ったらダメですという法律が不正競争防止法。これ、気を付けないといけないのはロゴやデザインだけじゃなくて、例えば広報資料やプレスリリースで他社製品を比較・批判する時もこれに違反する可能性があるという点です。
あとは、写真・音楽・記事・イラスト・動画などを無断利用すると著作権法に抵触しますし、ブランド名やロゴを勝手に使うと商標法に抵触します。有名人や一般人の顔写真・動画を許可なく広報に使うと、肖像権・パブリシティ権の侵害になります。
これらの既に存在しているものを使いたい場合ですが、その権利元に掲載したいという点を打診して、事前に了承をもらうのが原則的なルールです。よく引用元さえ明記すればOKだと誤解している人もいますが、厳密には違いますので注意して下さい。
個人情報保護法
この法律は、個人の権利と利益を保護することを目的としていて、個人情報の定義、取得、利用、提供などに関する取り扱いルールを定めています。
ここで言う個人情報は「個人を特定できるもの」です。氏名、生年月日、住所は分かると思いますが、顔写真の入ったものも個人情報に該当します。
またマイナンバーや運転免許証番号は個人識別符号としてそれ自体が個人情報となります。なお、それ単体では特定できないけれど、他の情報と照合する事で個人を特定できるものも個人情報に入ります。
この個人情報保護法って、個人情報を勝手に晒したらダメなんですよね?くらいに思っている方もいらっしゃいますが、その理解では不十分です。この個人情報の提出を依頼するところからこの法律は始まっています。
例えば、広報関連で社内の人に先ほどお伝えしたような何らかの個人を特定できる情報もしくは写真の提供を依頼する際には、その利用目的を本人に明示しなければいけません。
いつからいつまでこの広報媒体に掲載してこういう風に活用しますよといった感じです。そこで明示した目的以外に使用するのはダメですし、本人の許可なく第三者に共有するのもNGです。
よく「本人の事前同意書があればその範囲内で好きに使える」という解釈で、例えば広報写真について本人に「何にでも使っていいですよ」みたいな承諾書を書いてもらっていろんなところに使用する広報担当もいらっしゃいますが、事前同意書というのは法的拘束力はそこまで強くありません。
要は書いたご本人が「この同意書には確かにサインしたけれど、自分の肖像権が侵害されている」であったり「こういう使われ方をするという事前の説明は無かった」とかを言い出されるともめる可能性があるという事です。
なので大原則は「事前に本人に都度、具体的に説明する」というのが広報担当者のリスク管理としては正しいやり方になります。
プロバイダ責任制限法
インターネット上の名誉毀損、著作権侵害などに関してそれを仲介する業者、例えばインターネット接続業者とかSNSの運営会社とかの責任を制限して、被害者が加害者の情報を開示請求できる権利を定めた法律です。
具体的に言うと、例えばSNS上で自社に対する誹謗中傷があり、広報担当として容認できないものがあったとします。その場合、広報担当が取るべきアクションはこれらです。
①投稿の証拠を保存
②SNSプラットフォームに該当投稿の削除要請
③必要なら、SNSプラットフォームに発信者情報開示請求
④損害賠償請求へ
これは裏を返すと、自社がこういうケースで損害賠償請求をされるケースもありうるという事です。SNSでの投稿はアカウントがいかに個人風を装っていても、運営元が法人であるという実態があれば責任の所在は法人となります。企業公式のSNSアカウント運営では広報担当はこういった法律を特にしっかり把握しておきましょう。
























