【2025年版】広報PRの新刊本をまとめて紹介

【2025年版】広報PRの新刊本をまとめて紹介

スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。

2025年ももうすぐ終わりですね。
今年も多くの広報関連書籍が出版されました。

2025年に出版された広報関連の新刊本19冊の中から10冊を選んで、野澤の感想も交えながらご紹介します。
もし気になる本があれば、年末年始に読んでみてください。

  1. 新任広報担当者からの99の質問
  2. 広報で一番大切なこと
  3. 広報・PRの現場直送 だれでもPRメソッド スルーされない 伝わる情報設計
  4. 価値づくりの教科書 個人・小さな会社のためのブランディング
  5. 生成AI時代の新PR論 「水平統合型広報」という企業の生存戦略
  6. 仕事をしながら1日30分で売上が最大化する「超効率PR」
  7. Passion Relations 真・広報PR術 想いをこめた「物語」が共感の連鎖を呼ぶ
  8. ずるいPR術
  9. 技術広報の教科書──人事・広報・エンジニアが兼務から始める
  10. 広報のミカタ

1.『新任広報担当者からの99の質問』編著:江良俊郎、佐桑徹

『新任広報担当者からの99の質問』は、広報パーソンのあるあるな悩みをQ&A形式で整理した実務入門書です。株式会社エイレックスの江良俊郎社長と、経済広報センターの前常務理事・佐桑徹さん(故人)が編著を担当し、エイレックスのコンサルタント7名が著者として名を連ねています。

タイトルに「新任広報」とあるので、広報の初心者向けかと思って読むと、良い意味で期待を裏切られます。平易な言葉で書かれていますが、内容はかなり本格的です。

”実務入門書”と銘打っていますが、僕からすると、抽象的な内容が多く”実務ですぐに役立つ系、ノウハウ・ハウツー系”ではありません。むしろ、広報を高い視座や広い視点で理解できる、広報パーソンとしての教養を身につけるための本です。

著者の江良さんが社長をつとめるエイレックスは、あのビッグモーターの謝罪会見を取り仕切ったともいわれる、危機管理広報に強いPR会社です。そのため危機管理広報や炎上対策については、かなり具体的で充実した内容になっています。

2.『広報で一番大切なこと』著者:高場 正能

『広報で一番大切なこと』 は、平時から有事まで、行動から思想まで、リクルート、カルチュア・コンビニエンス・クラブをはじめ企業広報歴40年のプロフェッショナルがその豊富な経験を言語化した一冊です。

本書の特徴のひとつが、平時の広報と有事の広報、両方を均等に扱っている点です。「平時の広報」パートでは、広報の基本にはじまり、経営とのシンクロ、広報戦略の策定まで、広く深く網羅しています。

・広報活動には「仕入」「加工」「営業」のプロセスがある
・広報が収集した情報は3度言語化される
・取材記者のプレッシャートライアングル
といった、著者独自のユニークかつ、本質を突いた言葉も見所です。

「有事の広報」パートでは、事業会社の広報としての立場で、危機管理コンサルタントやPR会社とは異なる視点でノウハウを具体的に解説しています。クライシス広報の難しさは、通常の広報活動と異なり「学んだことを実際に試すことができない」という点です。

著者の高場さんは、1988年に起きた歴史的な汚職事件、リクルート事件をリクルートコスモスの広報担当として実際に体験しているだけに、その言葉には説得力があります。

3.『広報・PRの現場直送 だれでもPRメソッド スルーされない 伝わる情報設計』著者:電通PRコンサルティング PRX StudioQ

プレスリリースを送っても無反応。SNSの投稿はスルーされる。公式ブログやnoteが読まれない。これは多くの広報が抱える課題ではないでしょうか。そんな現場の悩みに寄り添いながら、それを打破するための方法を教えてくれるのが、この『だれでもPRメソッド』です。

「相手の立場にたって、伝わる方法を考える」という本質的な考え方を軸に、電通PRコンサルティングのプランナーが現場で実際に使っているスキル・暗黙知をメソッド化し、多くの図解と共に解説しています。たったの2,200円で、大手PR会社・電通PRの広報メソッドの一端を知ることができる、コスパ最高の1冊です。

広報のことをひと通り勉強した上で、もう一段上のレベルを学びたい、広報の中級者・上級者におすすめ。PR戦略や企画、切り口、アイデア、発想、コンテンツ作りなど、広報の上流工程におけるプロの手法を学ぶことができます。

4.『価値づくりの教科書 個人・小さな会社のためのブランディング』著者:村本彩

「価値を生み出し、人に伝えていくこと」をブランディングと定義し、個人や小さな会社向けに、ビジネスに活かす方法を解説しています。流行に左右されない本質的内容でありながら、具体例や図、ワークが豊富で実践的。スモールビジネスにおけるブランド構築の流れがこの一冊でわかる、思考と行動の教科書です。

「自分らしさ」「自然体」などのワードが並び、一見、感覚的でゆるふわな印象を受けますが、実際は非常にロジカル。著者の村本彩さんはサントリーでブランドマネージャーをしていた商品開発やマーケティング戦略の専門家です。

ペルソナ、インサイト、ポジショニング、3C分析、AISASなど、大企業が使っているブランディングやマーケティングの手法を、どうしたらスモールビジネスで応用できるのか。その答えがこの本に書かれています。

5.『生成AI時代の新PR論 「水平統合型広報」という企業の生存戦略』著者:黒木勝巳

著者の黒木勝巳さんはこの本の中で「水平統合型広報」という新しい思想を提唱しています。

コーポレートサイトを情報戦略の中核として、広報とマーケティングを一体化させることで、顧客のあらゆる行動段階において適切に情報を伝え、売上という企業の最終ゴールを目指す、という考え方です。

この本が斬新でユニークなのは「消費者が購買に至るまでの行動プロセス」や「行動が起きる条件」「起きない条件」といった”消費者行動論”から、広報・マーケティングのあり方を導き出している点です。

「広報活動が売上につながらない」「広報とマーケの連携不足」「社内の部署ごとに分断されて統一したメッセージが発信できない」。こういった課題意識を持つ広報さんには特におすすめ。この本から多くのヒントが得られると思います。

6.『仕事をしながら1日30分で売上が最大化する「超効率PR」』著者:笹木郁乃

本書は、PRプロデューサー・笹木郁乃さんがご自身の経験をもとに「個人事業主や中小企業が1日30分、時短でできるSNS広報戦略」を体系化した実践書です。キーワードは「ファン化」と「ストーリー(物語)」。

SNSの運用については、「アカウントの3本柱を決める」「情報の過去・現在・未来を整理」「どのSNSを選ぶべきか」といった上流設計の部分から、X、Instagram、Linkedin、それぞれの運用方法のポイントまでが、わかりやすく具体的に紹介されています。

特に秀逸なのは「PR設計の6ステップ」を解説した第3章です。ここでいう「PR設計」とは「商品やサービスの魅力を言葉にして整理する作業」であり「ストーリー作りを一連の手順として整理したもの」を指します。

広報活動をする上で、商品サービスやブランド、企業のストーリー(物語)が大事ということは理解しているけど、具体的にどうすればいいかわからない、そんな悩みのある方にはかなりおすすめな内容です。

7.『Passion Relations 真・広報PR術 想いをこめた「物語」が共感の連鎖を呼ぶ』著者:犬飼奈津子

著者はこの本で「Passion Relations」(パッション・リレーションズ)という、新しい考え方を提唱しています。同じPRでも「パブリック・リレーションズ」ではありません。

彼女曰く、広報は情報発信ではなく”心を動かす仕事”であり、その中心にあるのが「情熱を持って伝える力」。これが「Passion Relations」だと。僕はこの考え方にとても共感しました。

この本の最大の価値は、1冊が丸ごと事例だという点です。著者の犬飼さんは、名古屋の百貨店で15年広報を担当された方で、そのご経験や成功体験、エピソードを具体的に紹介してくれています。

戦略とか企画とか、広報の抽象的な概念論を紹介する本は多いのですが、こういう成功事例が具体的にわかる本って、意外と少ないんですよね。また、この本の舞台は「ジェイアール名古屋タカシマヤ」という地方都市の百貨店なので、地方企業の広報さんには特に参考になると思います。

8.『ずるいPR術』著者:下矢一良

「広報活動をするために実績は必要か」

創業したばかりで何の実績もないスタートアップやベンチャー企業にとって、これは悩ましい問題です。この本は、そんな悩みに対して明確なアンサーを出してくれます。

まず「一流」と見られるようにPRに注力する。「一流」と認められることで、人材や資金といった武器が獲得できる。だから、素晴らしい商品や実績を作るより先に、PRに取り組むべき。僕も全く同感です。

実際に、今や大企業になったソフトバンクやサーバーエージェント、楽天も、実績のない創業当時から広報活動に注力し、多くの報道を獲得することで会社を成長させてきました。

実績ゼロでも「スゴイ会社」と思わせる方法。一言でいえば、それがこの本の内容です。そのための広報PR手法やノウハウが、成功事例や具体的なプレスリリースと一緒に紹介されています。

9.『技術広報の教科書──人事・広報・エンジニアが兼務から始める』著者:河又涼

「エンジニアの採用が課題」というIT企業の広報さん、ぜひ「技術広報」について学びましょう。

この本の特徴は、タイトルに”人事・広報・エンジニアが兼務から始める”とある通り、兼務を前提に書かれている点です。技術広報の未経験者に向けて、概念だけでなく現場で即実践できる具体的アクションまで踏み込んだ内容になっています。

1章では技術広報の目的や立ち上げタイミングを整理し、2章では必要なスキルやマインドセットに触れ、3章以降で、テックブログ、イベント運営、カンファレンス協賛の手法、ポッドキャストやSNSといったチャネルの使い方、さらには戦略設計や効果測定、組織文化との連携に至るまで、9章構成で技術広報の全体像を理解できる内容になっています。

実はちょうど同じ時期に「技術広報」をテーマにした書籍がもう1冊出版されています。2025年は「技術広報」元年と言えるかもしれません。

10.『広報のミカタ』 編著:公益財団法人日本パブリックリレーションズ協会

皆さまおなじみの「PR手帳」が新書版サイズになり『広報のミカタ2026』としてリニューアルされました。『広報のミカタ』は広報担当者やPR業界関係者向けの情報ハンドブック・実践ガイドです。

媒体の部数、視聴率、PV数などのファクトデータから、主要メディアの連絡先、話題の最新のPRトレンドからキーワード解説まで、広報PRの基礎情報が凝縮されています。広報のプランニングから実行まで、あらゆる場面で頼れる一冊です。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人