ひとり広報を卒業するための「広報のチーム体制・組織づくり」

ひとり広報を卒業するための「広報のチーム体制・組織づくり」

スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。

スタートアップや中小企業の場合、広報業務全般をひとりで担当する、いわゆる「ひとり広報」が多いと思います。

広報の立ち上げ初期に、ひとり広報からスタートするのは仕方ありません。ただ、会社がある程度成長してきたら、ひとり体制は卒業して、広報をチーム化しましょう。

実は、リスクも含めて中長期的に広報の費用対効果を考えれば、そのほうが経営的にもプラスです。理想の広報チームには、5つの役割があるべきだと思います。

「マネージャー」「プランナー」「メディア担当」「デジタル担当」「ライター」。この5つがそろっているのが、確実に成果を出せる広報チームです。

じゃあ、広報チームは最低5人いなきゃいけないかというと、そういうことではありません。役割を兼務したり外注することで、もっと少ない人数で体制を作れます。

実はこの5つ以外にも「画像や映像のクリエイティブ制作」「イベント」「インナーコミュニケーション」「危機管理」などの要素もありますが、今回はよりシンプルな体制作りを意識して、これらは一旦、除外しました。

5つの役割についてそれぞれ詳しく説明します。

マネージャー

マネージャーは広報の責任者です。

広報活動の方針や戦略を決めた上で、広報チームのリーダーとして、部下のマネジメントをしながら、さまざまな意思決定を行います。目標やゴール設定、予算や年間計画の策定、他部署との連携もマネージャーの仕事です。

マネージャーには広報PRの広く深い知識と経験が必要ですが、「専門バカ」ではつとまりません。広報だけでなく経営全体を俯瞰してみる視野の広さと視座の高さ、つまり「経営視点」が求められます。

社長の考えや経営方針を理解した上で、経営課題を解決するために広報は何をすべきを考え、チームとして実行し、最終的に、”経営へのインパクト”という形で成果を出すのがマネージャーの役割です。

プランナー

プランナーは企画を考える仕事です。

広報活動においては、プレスリリース作成、メディアプロモート、SNS運用、オウンドメディアのコンテンツ作りなど、さまざまな場面で企画力が必要になります。

例えば、メディアに刺さるユニークなPR企画ひとつで取材が殺到する、なんてこともありえます。優秀なプランナーは、アイデアひとつで広報施策の効果や成功確率を高める重要な存在です。

プランナーには、メディア対応、SNSやオウンドメディアの運用など、現場での経験が不可欠です。現場を知らない頭でっかちにプランナーはつとまりません。

メディア関係者やSNSユーザーとの濃密な対話を経験して初めて、本当に価値のある企画やアイデアを生み出せるようになります。

メディア担当

メディア担当の主な仕事は取材対応やメディアプロモートです。

さまざまなメディアと良い関係を維持しながら、日々、記者や編集者との新しいつながりを作り続けます。マスコミ人脈が重要になる仕事です。自社のメディアリストの管理も担当します。

プランナーが面白いPR企画を考えてくれても、それをマスコミ関係者に届けることができなければ、報道を実現することはできません。そういう意味で、この役割はとても重要。

コミュニケーション力はもちろんのこと、メディアについての幅広い知識や洞察力が求められます。

デジタル担当

デジタル担当は、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokなどのSNSやオウンドメディア、自社ホームページの運用管理を行います。

企画やコンテンツ作成は、プランナーやライターと連携することが多いです。

投稿作業だけでなく、コンテンツの拡散状況やユーザーとのエンゲージメントなど、効果を分析し運用改善につなげる能力が求められます。

ひと口にSNSといっても、テキスト中心のX(旧Twitter)やFacebook、画像中心のInstagramでは特性が違いますし、最近では、プラットフォームを横断したショート動画の活用も増えています。

SNS全般の幅広い知識を持ちながら、自社にとって最適なプラットフォームを選び、組み合わせながら運用する能力も必要です。

また、デジタルPRの領域は変化が早いので、SEOやコンテンツマーケを含めて、最先端の知見を常にアップデートし続ける必要があります。

ライター

ライターはアイデアを文字や文章という形で具現化する仕事です。

広報の仕事にライティングは欠かせません。プレスリリース、PR企画書、SNSの投稿文、オウンドメディアのコンテンツなど、さまざまな場面でライターが活躍します。

ライティングというのは、一見、誰でもできそうですが、実は専門能力が必要とされる職人的な業務です。コンテンツの目的やトンマナに合わせて、わかりやすい文章を短時間で書ける優秀なライターは広報チームの強い味方になります。

広報チームの作り方

広報チームには、「マネージャー」「プランナー」「メディア担当」「SNS運用」「ライター」の5つの要素が必要ですが、僕は、これを全て内製化する必要はないと思います。

社員と社外のパートナーを組み合わせて広報チームを作るのがおすすめです。

まず、広報専任で、社員を2名おきます。この2名の主な役割は「マネージャー」と「プランナー」です。その上で「メディア担当」「デジタル担当」「ライター」は外部のパートナーに実務を委託する。

スタートアップであれば、会社がIPOするまでは、この体制で必要かつ十分だと思います。2名の社員が情報共有しながら広報業務を進めていれば、仮にどちらかが退職しても、広報体制を維持できます。

「メディア担当」「デジタル担当」「ライター」は専門スキルを要するため、外部のプロに依頼すべきです。PR会社など専門業者もいますし、フリーランスに委託すればコストも安くおさえられます。

また、外注の活用には「コストコントロールがしやすい」「施策設計が柔軟にできる」「育成の手間がない」「社員が退職しても通常業務がストップしない」など多くのメリットがあります。

ここでひとつ注意点があります。業務を外注する前に、まずは社員が自分で手を動かして、一定程度、実務経験を積むようにしてください。そうでないと、外部のパートナーに対して適切なディレクションができません。

広報チームの社員2名は、「マネージャー」「プランナー」「メディア」「デジタル」「ライター」の5つの要素についての知識と経験があり、自分でも全て実行できるけど、それは物理的に難しいので実務部分を外部に委託する。そうあるべきです。

だから、ひとり広報の時期に、広報業務を幅広く、一通り自分自身で経験しておくというのは、大変だとは思いますが、非常に重要なことだと思います。

ひとり広報の皆さんへのメッセージ

ひとり広報はチャンスに溢れています。

プレスリリース、メディアプロモート、SNS、オーンドメディア、イベントなど、会社にとって必要な広報業務であれば、何でも貪欲に取り組みましょう。

まずは、自分でやってみる。できるようになった業務は部下に任せる。もしくは外注する。そして、自分のリソースが空いたら、新たな広報領域にチャレンジして、自分のできることを増やす。このサイクルを回してください。

そうすることで、あなたのPRパーソンとしての戦闘力が上がり続けると同時に、会社には広報チームが自然とできあがります。まさに、WIN-WINです。

もし会社として、今後も継続的に広報活動をしていくつもりなら、ひとり広報はできるだけ早く卒業して、社員2人の広報チームを作ってください。

二人目の広報スタッフは、作業者ではなく、ひとり広報の分身であるべきです。広報の社員を増やすのは、あなたが楽をするためではありません。

ひとり広報でいる限り、あなたが退職したら、会社が困るんです。ひとり広報は会社にとってリスクなんです。

広報は専門職ですから、当然、転職することもあるでしょう。それは否定しません。ただし、転職するなら必ず後任を育ててからにする。これがお世話になった会社への誠意だと思います。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人