「マコなり社長の炎上」から広報視点で学ぶべきこと
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「マコなり社長の炎上」から広報視点で学ぶべきこと

広報PRにおける従来の危機管理は、謝罪会見の適切な運営やネガティブ報道の抑制が主な役割でした。しかし、経営者自らがSNSなどを通じて情報発信する時代になったこともあり、これまでの広報セオリーが通用しなくなっています。チャンネル登録者数100万人超のYouTuberによる炎上事例から、これからのあるべき広報活動を考察します。

ビジネスYouTuberの炎上事例に学ぶ

プログラミング教室「テックキャンプ」を運営する株式会社divというスタートアップ企業をご存知でしょうか。代表の真子就有(まこゆきなり)氏は、チャンネル登録者数100万人を超える経営者YouTuber「マコなり社長」としても活躍しています。

先日、このマコなり社長がネットで炎上しました。きっかけは、『Flash』の記事です。

Mac100台ばらまくも実態はボロボロ…経営者YouTuber「マコなり社長」が行っていた大量リストラの波紋

その後、マコなり社長がリストラについて社員に説明する動画が社外に流出し、炎上騒ぎになりました。

【狂気】マコなり社長、問題のスピーチ動画|リストラする社員の前で

なぜ、こんなことになってしまったのか。この炎上事例には、スタートアップやベンチャー企業の広報担当者が学ぶべき点が多くあります。

危機管理広報はマスコミ対応とSNS炎上対策、両方のスキルが必要

今まで、危機管理広報といえば、謝罪の記者会見運営やネガティブ報道の抑え込みが広報の仕事でした。
つまり、今まではマスコミ対策だけを考えていればよかったわけです。
しかし、もはやそんな時代ではなくなりました。

ネットで炎上したときに、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上で関係者(特に社長)がどう振る舞うかはとても難しいです。今回、マコなり社長は、ネットでの炎上を黙殺し、自身のYouTubeチャンネルのコメント欄でもネガティブコメントを排除するなど、情報統制を行なっているようです。

果たしてこの対応が正解なのか。また、リストラ炎上後も、マコなり社長は、自分のYouTubeチャンネルで騒動には一切触れず、平然とこんな動画を配信しています。

自宅のトイレに絶対に置いてはいけないものTOP5

【今すぐ食べないと損】皆知らないガストの最強メニューTOP5

リストラされた社員は、これらの動画をみてどう思うのでしょうか。

外部発信と社内実態の乖離は広報リスク

『Flash』の記事のタイトルに注目してください。
「Mac100台ばらまくも実態はボロボロ」。つまり「テックキャンプは外から見ると調子良さそうだけど、実際中身はひどい状態ですよ」という意味です。

このギャップや意外性が、『Flash』の記事のニュースバリューになっています。マスコミは「ギャップ」や「意外性」が大好き。ネガティブな話ならなおさらです。
だから、広報的には、なるべく外部への発信と社内の実態にギャップを作らず、社内にも社外にも「隠さない」「嘘をつかない」「正直であること」。これが重要になります。

同じリストラする場合でも、青山商事は「希望退職者を募る」というネガティブな情報について、プレスリリースを出しています。

希望退職の募集及び役員報酬の減額に関するお知らせ(2020年11月10日)

さらに、「希望退職400名の枠に、600名以上の希望者が集まっちゃったよ…」という会社として恥ずかしい話を、わざわざプレスリリースで発表しています。

希望退職の募集結果に関するお知らせ(2021年2月22日)

広報担当者が、自社のネガティブ情報を社外に発信することに、ためらいを感じる気持ちはわかります。
しかし、青山商事はこうした情報発信の結果、リストラしてもネットで炎上していません。

むしろ、マスコミは「まあ、コロナだし、アパレルは大変だよね。がんばってね」という同情的なトーンで、報道しています。
青山商事の広報活動のような、誠実な情報公開の姿勢、正直さが、結果的に会社のレピュテーション(評判)を守ることになるのではないでしょうか。

インナーコミュニケーションの重要性

『Flash』の記事には、こういうくだりがあります。
「…彼が笑みを浮かべて、大それた企画を発表したちょうどそのころ、『マコなり社長』の実態を告白する声が、本誌に届いた」。
つまり、この『Flash』の記事のきっかけは、株式会社divの社員によるマスコミへの内部告発なのです。

『Flash』の記事が出た後も、現役社員や元社員による社内情報(社長のスピーチ動画やCFOが社員を恫喝するメールなど)の流出が止まりません。
それが炎上拡大の大きな要因になっています。

広報には「社外広報」と「社内広報」があります。
社内広報(インナーコミュニケーション)は地味ではあるものの、実は非常に大切です。
「PR」とは「パブリックリレーションズ」の略語ですが、パブリックリレーションズとは、ステークホルダーと良好な関係を築くための活動であり、これが広報の本質です。

ステークホルダーは、生活者、顧客、取引先、株主、地域社会など、社外の人だけではありません。
「社員」も重要なステークホルダーです。
社内情報の流出というのはモラルの問題であり、ルール(社内の規定など)で100%縛るのは難しいでしょう。

会社と社員の間に信頼関係があれば、本来、こうしたことは起きづらいはずです。
社内広報(インナーコミュニケーション)を適切に行い、日頃から社員と会社が良好な関係を作る。
それが、いざという時に会社を守ことになります。これこそまさにパブリックリレーションズ、広報活動なんですね。

経営層や上長が炎上や問題となるような発言を軽んじて、広報担当者の意見を聞き入れづらい環境もあるかもしれません。
日々のコミュニケーションが大切とも言えますが、緊急事態には早期に専門家を頼るのが確実です。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

記事の執筆者
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