“100のテクニック”で学ぶ広報の基礎やソーシャルメディア活用

おすすめ書籍

書籍：『新版 実践マニュアル 広報担当の仕事 すぐに役立つ100のテクニック』
著者：五十嵐寛
発行元：東洋経済新報社

本書は2004年の初版発行から、10年後に改訂版として発売されました。著者の「広報担当者の悩みや疑問に答えたい」という思いが、100のテクニックとしてわかりやすくまとめられており、広報の課題解決につながる書籍です。

1テクニック、1ページでコンパクトに課題解決が示されています。初版ではあまり語られることのなかったソーシャルメディア活用は、インターネットを利用した広報活動にお悩みの方に、ぜひ読んでいただきたいです。

100の技として「広報の基本」から紹介

まずは、前半から中盤の章を紹介します。
I コムパケを作ろう
II 受けの広報と記者会見
III 攻めの対外広報を実現する
IV 年間広報プランを立てる

これらの章は、ニュースリリースの書き方・配布の仕方、広報プランの立て方、記者発表会の進行についての基本がまとめられています。広報初心者の方はもちろん、長年広報に携わってきた方でも業務効率化を図るために有効でしょう。

さらに、地方の記者クラブやメディアに自社やサービスの理解を深めてもらうための方法論に触れている「地方でのパブリシティは効果絶大」「FAMトリップともいわれる『メディアツアー』」は、メディアと良好な関係性を築くための手段の1つとして紹介されています。新型コロナウイルスなどの社会的環境や予算の問題はありますが、とても効果・成果を出しやすいアクションなので、取り入れてみる価値はあると思います。

危機管理やソーシャルメディアとの付合い方

注目なのは、著者の経歴ならではの危機管理を強く意識したテクニックが満載なことです。「V 不祥事や危機に備える」の中には、平時の時に有事の準備をしておくためのノウハウが図解やフォーマットで、具体的かつ簡潔にまとめられています。まさに「実践マニュアル」と言えるでしょう。

また、改訂部分の「VI ソーシャルメディアと広報」の章は、昨今では当たり前のように、誰もが情報ソースとして利用するWikipediaに着目しています。ソーシャルメディア・ポリシー（ガイドライン）の理解にもきちんと触れ、なぜWikipediaに注目し、自社のホームページと同じように「管理」しなければならないかを述べています。著者ならではの、ソーシャルメディアとの関わり方です。

最終章の「VII トップ直結の広報を目指す」で興味深いのは、「トップに広報の仕事を気づかせる4つの提案」。経営トップとの連携は、広報戦略の肝であると同時に、悩みも多いテーマです。

「トップに広報の仕事を気づかせる4つの提案」
1.社長のパブリシティを積極的に行う
2.メディアトレーニングを受けてもらう
3.メディアのキーマンと関係構築を図る
4.広告代理店に相談する

いかがでしょうか。日々の広報業務に取り入れやすく、広報担当者が経営者にどう働きかければ良いか、自ずと見えてくる提案だと思います。

まとめ

改訂から既に7年経っていますが、現在の状況を取り巻く環境は変われど、広報担当者が身につけるべきノウハウ・知識は変わらないと実感する書籍でした。革新的なものや戦略的な目線ではなく、社内で要求される実務レベルで役に立つテクニックなので、新任広報担当者のバイブルとして、また広報歴が長い方でも基本や初心を再確認できる1冊ではないでしょうか。

著者プロフィール

1994年3月、神奈川大学経営学部国際経営学科卒業（広報専攻）。1994年4月、株式会社プラップジャパン入社。企業広報を中心に、イベント企画・運営、商品広報、危機対応広報などを経験。2001年1月、ヒルアンドノウルトンジャパン株式会社入社。企業広報のコンサルティングのほか、クライシスコミュニケーションやメディアトレーニングを担当。2004年1月からフリーの広報コンサルタント、ライターとして独立。2006年1月株式会社ハーバーコミュニケーションズを設立し、代表取締役に就任。

書籍：『新版 実践マニュアル 広報担当の仕事 すぐに役立つ100のテクニック』
著者：五十嵐寛
発行元：東洋経済新報社