スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。
この記事の執筆者
野澤 直人(のざわ なおひと)
株式会社ベンチャー広報 代表取締役
ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材後、海外留学関連のベンチャー企業で広報部門をゼロから立ち上げ。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業し、以来スタートアップ・ベンチャー専門で400社以上の広報を支援。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。
「広報を立ち上げたいけど、何から始めればいいか分からない」
こういった相談を受けることが、ここ数年でかなり増えてきました。「広報担当に任命されたが、前任者もいないし、社内に詳しい人間もいない」という状況で途方に暮れている方も多いですよね。
広報は、広告や営業と違って即効性がある施策ではありません。だからこそ、立ち上げ時の設計をどうするかで、その後の積み上がり方が大きく変わります。逆に言うと、最初の方向性さえ間違えなければ、一人でもちゃんと成果につなげられる活動なんです。
この記事では、広報をゼロから立ち上げるための具体的な手順と、最初の90日間で取り組むべきことをまとめました。ひとり広報としてつまずきやすいポイントも正直にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
広報を立ち上げる前に知っておきたいこと
スタートアップこそ早い段階から広報に取り組む価値がある
結論から言うと、スタートアップにとって広報は「認知を広げるための活動」ではなく「信頼を積み上げていくための活動」です。
大手企業はすでにブランドがあります。でも、スタートアップにはそれがない。だからこそ、メディアに取り上げてもらう、情報を発信し続けるという行為が、信頼の蓄積に直接つながるわけです。
広報活動が効いてくると、採用にも変化が出てきます。「会社のことを記事で読んで応募しました」という候補者が増えてくる。営業でも「前から知っていました」という顧客が出てくる。資金調達でも、投資家からの問い合わせが増えることがあります。こうした副次効果を感じ始めるのが、広報を継続した先に待っているものです。
ただ、正直に言うと、創業直後から広報に全力を注ぐ必要はありません。事業やサービスが一定程度形になって、採用や認知拡大が経営課題として浮かび上がってきたタイミングが、広報を本格的に始めるサインだと思っています。「まだ早いかな」と感じている段階でも、準備だけは始めておくと後が楽になりますよ。
ベンチャー企業における広報の立ち上げのタイミングについては、以下の記事で詳しく書いています。
ベンチャー企業こそ力を入れたい!広報立ち上げ3つのタイミング
広報の立ち上げで最初に決めるべき「目的」
広報を立ち上げるとき、最初に決めるべきことは1つだけです。「広報で何を実現したいのか」という目的です。
この目的が曖昧なまま始めてしまうと、あとで困ったことになります。プレスリリースを出しても「これは何のためにやっているんだっけ」と迷子になったり、成果を測ろうとしても基準がなかったりする。ひどい場合だと、施策を積み重ねたのに何も変わっていない、ということになりかねません。
広報活動の目的として多いのは以下のようなものです。
- 採用強化(認知を上げて応募を増やす、エンジニアや営業人材に届く)
- 認知向上(業界内でのブランドポジション確立)
- リード獲得(記事経由での問い合わせ創出)
- 資金調達支援(投資家や業界関係者への存在感の演出)
この中から「今、自社が最も力を入れたいのは何か」を1つか2つに絞ってください。全部やろうとすると、どれも中途半端になります。目的が決まれば、どのメディアにアプローチするか、どんなネタを発信すべきかも自然と見えてきます。
広報をゼロから立ち上げる手順【5ステップ】
STEP1|自社の発信ネタを棚卸しする
広報立ち上げで最初にやるべきことは、自社の発信ネタを整理することです。
「うちにはネタがない」と言う会社に限って、話を深掘りすると発信できる材料がたくさん出てきます。整理できていないだけで、実は材料はあるわけです。
棚卸しの対象として確認してほしいのは以下のような項目です。
- 創業ストーリー(なぜこの事業を始めたのか)
- サービス開発の経緯(どんな課題を解決しようとしているのか)
- 顧客事例(導入企業の声や変化)
- 資金調達の背景とビジョン
- 採用情報(どんな人を求めているか、なぜ今採用するのか)
- 社内制度やカルチャー(働き方の工夫、ユニークな取り組み)
- 業界課題への見解(代表や専門家としてのコメント)
ここで気をつけてほしいのは、「ニュースになるかどうか」ではなく「社外に伝える価値があるかどうか」という視点で整理することです。すべてがプレスリリースになるわけではありませんが、SNSの投稿やnote記事、採用サイトのコンテンツとして活かせるネタはたくさんあるはずです。
STEP2|誰に何を伝えるか整理する
ネタの棚卸しができたら、次は「誰に伝えるか」を整理します。
広報は、全員に向けて全部を伝えようとすると、誰にも刺さりません。ターゲットによって、伝えるべきメッセージもチャンスも変わるわけです。
主なターゲットと、それぞれに伝えるべき内容の例を整理すると以下のようになります。
- 顧客・見込み顧客 → サービスの価値、導入事例、業界課題への視点
- 求職者 → カルチャー、ビジョン、働く環境、成長できる理由
- 投資家・業界関係者 → 市場の見立て、事業の成長性、経営チームの実力
- メディア関係者 → ニュース性、社会的意義、読者に届く切り口
この整理作業が、のちの広報活動の「軸」になります。メディアにアプローチするときも、SNSで発信するときも、「このメッセージは誰に届けるためのものか」という軸がブレなくなるんです。
STEP3|広報に必要な基本資料を整える
発信を始める前に、最低限これだけは用意しておいてほしいという資料があります。
- 会社概要(事業内容・設立年月・代表者・従業員数・所在地)
- 代表プロフィール(経歴・顔写真・略歴コメント)
- サービス説明資料(A41枚程度でも構わない)
- ロゴデータ(横・縦・白黒など複数パターン)
- 代表や社内の写真素材(高解像度のもの)
ちなみに、これが整っていないと取材依頼が来たときに慌てることになります。メディアの人は「すぐに資料を送ってほしい」と言ってくることが多いので、サッと出せる状態にしておくことがとても大切です。
実際、「取材を受けたいが資料がない」「ロゴがどこにあるか分からない」という会社を何社も見てきました。こういった準備不足が積み重なると、メディアとの信頼関係にも影響します。基本資料の整備は地味ですが、最初にちゃんとやっておきましょう。
STEP4|最初の広報活動を始める
準備が整ったら、小さく発信を始めます。
最初の一手として多いのは以下のような活動です。
- プレスリリースの配信(PR TIMES や @Press などの配信サービスを活用)
- SNS発信(X・LinkedInなど代表や会社アカウントでの情報発信)
- note記事の公開(代表の考えや事業の背景を言語化する)
- オウンドメディアでのコンテンツ発信
最初から大きな成果を期待しすぎないことが重要です。第1回目のプレスリリースで大手メディアに掲載される会社はほとんどありません。大切なのは、発信を続けることと、発信後の反応を見ながら改善を繰り返すことです。
あわせて、今後アプローチしたいメディアのリストもこの時期に作り始めてください。業界メディア、ビジネスメディア、地域メディアなど、自社の目的に合ったメディアを20〜30媒体リストアップしておくと、次のステップで動きやすくなります。
STEP5|継続できる仕組みを作る
広報は継続によって成果が積み上がる活動です。単発で発信して終わりでは、なかなか成果にはつながりません。
仕組みとして作っておきたいのは以下のようなものです。
- 月1回のネタ会議(経営者や各部署の担当者と30分でも話す場を設ける)
- 社内情報共有フロー(「これ広報のネタになるかも」と気軽に伝えられる仕組み)
- 発信カレンダー(月に何本発信するかをあらかじめ決めておく)
ひとり広報の場合、この仕組みがないと「気づいたら3か月何も発信していなかった」ということが起きます。忙しいとき、ネタがないとき、モチベーションが落ちているとき、それでも続けられる仕組みを最初から作っておくことが、広報立ち上げ成功のカギです。
一人で学びながら立ち上げるなら
広報をゼロから学び、同じ立場の仲間や経験者に相談しながら進めたい方は、オンラインサロン「ゼロイチ広報」がおすすめです。
自走が難しければ、立ち上げの伴走という選択肢も
「一人では手が回らない」「最初の設計だけプロに見てほしい」という場合は、広報の立ち上げを代行・コンサルで伴走する方法もあります。自社の状況に合うか、まずは資料や個別相談でご確認ください。
広報立ち上げ後90日間のロードマップ
1か月目|土台づくり
1か月目は発信よりも準備に徹してください。焦って発信を始めるより、ここをしっかりやっておくほうが、あとの活動がずっとスムーズになります。
この時期にやるべきことは以下です。
- 広報の目的を経営者と確認・合意する
- 発信ネタの棚卸し(STEP1)
- ターゲットとメッセージの整理(STEP2)
- 基本資料の整備(STEP3)
- アプローチしたいメディアリストの作成 ・簡易的なKPI設定(月の発信本数・アプローチ媒体数など)
「まだ何も発信できていない」と焦る必要はありません。土台のない家はすぐに倒れます。1か月目は土台づくりに集中しましょう。
2か月目|発信開始
土台ができたら、いよいよ発信を始めます。
2か月目の目標は「とにかく一つ発信する」です。完璧を目指さなくていい。多少荒削りでも、まずリリースを出す、まず記事を書くという経験が大切です。
この時期の活動例は以下のとおりです。
- プレスリリースを1〜2本配信
- SNSの運用を始める(週2〜3回の投稿)
- note記事を1〜2本公開
- メディアへの積極的なアプローチ(リリース送付、メールでの接触)
メディアとの接点づくりもこの時期から意識してください。プレスリリースを配信するだけでなく、「こういう取材はどうでしょうか」と能動的に提案するのが広報の本来の動きです。
3か月目|改善と仕組み化
3か月目は、2か月目の発信を振り返り、改善と仕組み化を進める時期です。
やるべきことは以下です。
- 発信結果の振り返り(反応が良かったネタ・ダメだったネタを分析)
- メディアからの反応をもとに切り口を改善
- ネタ収集フローの構築(月1回のネタ会議など)
- 継続できる発信カレンダーの設定 ・広報活動を日常業務の中に組み込む
この時期に「継続できる仕組み」を作り上げられるかどうかで、4か月目以降の広報活動の質が変わります。「できたから良かった」ではなく、「次もできる仕組みがある」という状態を目指してください。
立ち上げ期に「この進め方で合っているのか」と悩むことは誰でもあります。 そんな方に活用してほしいのが、ゼロイチ広報というコミュニティです。広報立ち上げ期の担当者や経営者が集まり、実務レベルで相談・情報交換できる場です。一人で抱え込まずに、経験者の知見を借りながら進めていきましょう。
ひとり広報がつまずきやすいポイントと乗り越え方
発信するネタがない
ひとり広報の最初の壁として「発信するネタがない」という悩みをよく聞きます。
でも、正直に言うと、ネタがないのではなく、整理できていないケースがほとんどです。
顧客への導入事例が1件でもあれば、それはネタです。新しいメンバーが入社したなら、それも伝えられます。代表が業界に対してなんらかの考えを持っているなら、コラムとして発信できます。
定期的な棚卸しをやる習慣がないと、日常の出来事が流れていくだけになります。毎月1回「今月発信できることは何か」を棚卸しする時間を作るだけで、ネタ不足はかなり解消されます。
プレスリリースを出しても反応がない
「プレスリリースを出したのに、どこにも掲載されなかった」という声もよく聞きます。
これは、最初はほとんどの会社が経験することです。初回から掲載される会社のほうが少ないくらいです。
プレスリリースは「出せば掲載される」ものではありません。メディアにとって読者に届けたいニュース価値があるかどうかが掲載の基準です。つまり、掲載されないのは「価値がない」ではなく、「伝え方や切り口がメディアのニーズと合っていない」ことが多いわけです。
タイトルの付け方、切り口、配信するメディアの選定を改善しながら継続することが重要です。「掲載されない=失敗」ではなく「改善のサイン」として受け取ってください。
→ プレスリリースの書き方・配信のコツについて詳しくはこちら
社内の協力が得られない
ひとり広報が抱えがちなもう1つの悩みが、「他部署が動いてくれない」「情報が集まらない」という問題です。
他部署から見ると、広報は「自分たちの仕事に関係ない部署」に見えることがあります。だから「取材のために少し時間をください」と言っても後回しにされる、ということが起きるわけです。
この問題の根本は、広報の価値が社内に伝わっていないことです。だから、小さな成果でもちゃんと可視化することが大切です。「先週プレスリリースを出した結果、こんな反応がありました」「このメディアに掲載されました」という情報を社内にこまめに伝えていくことで、少しずつ「広報は成果を出している」という認識が生まれてきます。
広報は一人の仕事ではなく、全社で取り組む活動です。この意識を社内に醸成することを、立ち上げ期から意識してほしいと思います。
広報担当者が孤立してしまう
ひとり広報に特有の悩みとして「社内に相談できる人間がいない」というものがあります。
広報経験者が社内にいない場合、「この方向で合っているのか」「他社はどうやっているのか」が全く分からないまま手探りで進めることになります。これはかなりつらい状況ですよね。
ただ、広報は「正解が1つ」ではない仕事です。会社の規模や業種、時期によって、やるべきことが変わります。だからこそ、他社の広報担当者と情報交換できる環境を持つことが、継続するうえでとても大きな助けになります。
社外の広報コミュニティや勉強会を活用して、「同じ悩みを持つ仲間」を見つけることをおすすめします。一人で抱え込まないことが、広報を長く続けるための秘訣です。
成果が見えず不安になる
「半年広報をやっているが、本当に効果があるのか分からない」という不安は、立ち上げ期の広報担当者が必ずと言っていいほど経験します。
広報は、広告のように「投資した分が数字に返ってくる」という活動ではありません。中長期で少しずつ信頼と認知が積み上がっていく活動です。
ただ、それは「成果が見えない」ということではありません。指名検索(社名で直接検索されること)の増加、SNSでのフォロワーや反応数の変化、メディアとのやり取りの件数、採用への問い合わせ数の変化など、小さな変化を丁寧に拾っていくと、確実に広報の積み上がりが見えてきます。
掲載件数ゼロでも採用応募が3倍になった、という会社を私は知っています。広報の成果は「掲載された/されない」だけでは測れないわけです。
広報立ち上げ期のKPIと体制の考え方
掲載件数だけで成果を判断しない
広報のKPIとして最もよく使われるのが「掲載件数」です。分かりやすい指標ですし、社内への報告にも使いやすい。でも、掲載件数だけで広報の成果を判断するのは危険です。
例えば、大手ビジネスメディアに一本掲載されることと、業界特化の専門メディアに5本掲載されることでは、目的によってどちらが価値があるかは変わります。採用が目的ならキャリアメディアへの掲載が大事ですし、営業支援が目的なら業界メディアへの露出が重要になるわけです。
あわせて確認してほしい指標は以下のとおりです。
- 指名検索数の変化(Googleサーチコンソールで確認)
- SNSのエンゲージメント(いいね・コメント・シェア数)
- メディアとの接点数(取材対応件数・リリース送付数)
- 問い合わせや採用応募数の変化
これらを複数組み合わせて広報成果を判断する姿勢を最初から持っておいてください。
ひとり広報でも始められるが、経営者を巻き込む仕組みが必要
スタートアップの広報において、「経営者が情報を出してくれない」「代表が忙しくてインタビューに協力してもらえない」という問題は非常によく起きます。
でも、スタートアップの広報で最も強力なコンテンツは、経営者の言葉です。創業ストーリー、ビジョン、業界への見解、失敗談、挑戦の背景。これは経営者にしか語れないし、メディアもそこに興味を持つわけです。
ひとり広報が経営者を巻き込む仕組みとして効果的なのは以下のようなものです。
- 月に1度、30分だけ「広報ミーティング」を設定する
- 代表に「今月何か発信したいことはありますか」と定期的にヒアリングする
- 取材依頼が来たとき、「この機会に何を伝えたいか」を一緒に考える習慣をつける
広報を「広報担当者だけの仕事」にしてしまうと、長続きしません。経営者を積極的に巻き込む仕組みを、立ち上げ期から意識的に作っていきましょう。
まとめ|広報の立ち上げは「完璧な準備」より「まず始めること」が大切
改めて、広報立ち上げの流れを振り返ります。
- STEP1:自社の発信ネタを棚卸しする
- STEP2:誰に何を伝えるかを整理する
- STEP3:広報に必要な基本資料を整える
- STEP4:最初の広報活動を始める
- STEP5:継続できる仕組みを作る
そして90日間でこのサイクルを1回回すことが、広報立ち上げの現実的なゴールです。
よく「もう少し準備が整ってから始めよう」と先延ばしにする経営者や担当者を見かけます。でも、広報は完璧な準備が整ってから始めるものではありません。始めながら改善していくものです。最初のリリースが完璧じゃなくても、最初の記事が荒削りでも、それでいい。続けることのほうがずっと大事です。
一人でやっていると、どうしても「この進め方で合っているのか」と不安になる瞬間がきます。そういうときに、一人で抱え込まないでほしいのです。
ゼロイチ広報は、広報立ち上げ期の担当者や経営者が、横のつながりを持ちながら学べるコミュニティです。経験者に相談できる、同じ悩みを持つ仲間と情報交換できる場として、ぜひ活用してください。広報は孤独な仕事じゃなくていい。一緒に取り組める環境を使い倒してほしいと思います。
一人で学びながら立ち上げるなら
広報をゼロから学び、同じ立場の仲間や経験者に相談しながら進めたい方は、オンラインサロン「ゼロイチ広報」がおすすめです。
自走が難しければ、立ち上げの伴走という選択肢も
「一人では手が回らない」「最初の設計だけプロに見てほしい」という場合は、広報の立ち上げを代行・コンサルで伴走する方法もあります。自社の状況に合うか、まずは資料や個別相談でご確認ください。


























