企業出版とは?費用相場とメリット・デメリット、商業出版/自費出版との違い

企業出版とは?費用相場とメリット・デメリット、商業出版/自費出版との違い

企業出版とは?費用相場とメリット・デメリット、商業出版/自費出版との違い

スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。

今回は「企業出版」について書きます。

経営者の本を出したい。会社の実績を1冊にまとめたい。そう考えて見積もりを取ってみたら、思っていたより一桁大きい金額が出てきて驚いた。そういう経験をされた方は少なくないと思います。

企業出版の費用がわかりにくいのは、「誰が制作費を負担するか」で総額が大きく変わるのに、その前提が見積もりの表に出てこないからです。

この記事では、企業出版とは何か、商業出版・自費出版とどう違うのか、費用はどこにいくらかかるのかを、実際に書籍出版プロデュースを行っている立場から整理します。

この記事の執筆者

野澤 直人(のざわ なおひと)

株式会社ベンチャー広報 代表取締役

ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材後、海外留学関連のベンチャー企業で広報部門をゼロから立ち上げ。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業し、以来スタートアップ・ベンチャー専門で400社以上の広報を支援。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

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企業出版とは?商業出版・自費出版との違い

企業出版とは、企業が自社の理念・ノウハウ・実績を書籍にして、経営課題の解決に使う出版のことです。「ブランディング出版」「カスタム出版」と呼ばれることもあります。

目的は本の売上ではありません。社長のブランディング、売上・業績の向上、採用の強化。書籍を経営のための道具として使うのが企業出版です。

3つの出版方式の違い

混乱の元になっているのが、出版方式の呼び分けです。整理すると次のようになります。

  • 商業出版|出版社が制作費を負担し、出版社の判断で出す。著者に印税が入る。企画が通らなければ出せない
  • 自費出版|著者・企業が費用を全額負担する。出版社の企画会議を通す必要がないので、内容の自由度は高い
  • 企業出版|企業が費用を負担して出す点は自費出版に近いが、書店流通やPRまで設計して経営課題の解決を狙う点が違う

ここで押さえてほしいのは、「企業出版」は費用負担の方式を指す言葉ではないということです。企業出版という目的のもとで、商業出版として通すこともあれば、自費出版の形をとることもあります。そしてどちらになるかで、総額が一桁変わります。

企業出版の基本は、こちらの記事でも解説しています

出版の目的や、報道との違いといった基礎的な部分は企業出版のための基礎知識にまとめています。この記事では、その先の費用と進め方を掘り下げます。

企業出版の費用|どこに何がかかるのか

企業出版の費用は、大きく2つに分かれます。

  • プロデュース会社に支払う費用|企画をつくり、出版社に通すための費用
  • 出版社に支払う費用|編集・制作・印刷・書籍買取などの実費

見積もりが読みにくくなるのは、この2つが混ざって提示されるときです。当社の料金を例に、それぞれ具体的に説明します。

1. 企画書の作成と出版社への提案

当社の場合、書籍出版企画書の作成・提案が60万円(税別)です。契約期間は3か月〜最長6か月。含まれるのは次の内容です。

  • 企画書作成に向けてのヒアリング活動(1時間)
  • 企画書の作成と、出版社への提案・交渉(最大5社まで
  • 交渉結果のフィードバック(電話・メール)

ここで重要なのは、出版が実現しなかった場合でも返金はないという点です。当社に限らず、企画提案型のサービスは基本的にこの構造になっています。企画を作り、出版社に持ち込み、交渉するという労力そのものに対する費用だからです。

検討している会社があれば、この条件を必ず確認してください。「出せなかったらどうなるのか」は、契約前に聞いておくべきことです。

2. 商業出版として通った場合

出版社の編集会議を通過して商業出版になれば、制作費は出版社が負担します。企業側が出版社に支払う費用はありません。

当社の場合、出版決定時の成功報酬として70万円〜150万円(税別)をいただいています。金額は出版社によって異なるため、事前に見積書を作成します。

つまり商業出版として通れば、企業側の負担は企画提案の60万円+成功報酬70〜150万円が中心になります。

3. 自費出版として進める場合

企画が商業出版として通らない、あるいは最初から自費出版を選ぶ場合は、構造が変わります。

当社への成功報酬は発生しません。そのかわり、出版社に対して編集費や書籍買取費用などの実費が別途かかります。その水準は数百万円〜が目安です。

見積もりを見て驚いた、という話の多くはここです。決して不当な金額ではなく、編集者・デザイナー・校正・印刷・書店流通のすべてを企業側が負担する以上、そうなるという話です。

だからこそ、最初のヒアリングで「商業出版を狙えるか、自費出版でいくか」を見極めることが決定的に重要になります。当社でも、作業ステップの最初にこの見極めを置いています。

4. 出版後のPR活動費

見落とされがちですが、本は出しただけでは読まれません。1日に約200冊、年間で約7万冊の新刊が出るなかで、自社の本を知ってもらう活動が別途必要になります。

当社では書籍のPR活動は別途見積りとしており、目安は活動期間1か月あたり50万円〜です。

書籍PRのように期間を区切って依頼する形と、月額固定で広報全体を任せる形とでは、費用の考え方が変わります。契約形態ごとの違いはリテーナー契約とは?PR会社の契約形態と費用の考え方・スポット依頼との違いで整理しました。

費用の全体像を整理すると

  • 商業出版ルート|企画提案60万円+成功報酬70〜150万円(+PR活動費)
  • 自費出版ルート|企画提案60万円+出版社への実費 数百万円〜(+PR活動費)

同じ「企業出版」でも、ここまで差が出ます。総額だけを他社と比べても意味がないのは、この前提が違うからです。

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企業出版の進め方|3ステップで3か月〜1年

「本を出そう」と決めてから実際に書店に並ぶまで、どれくらいかかるのか。当社の場合、活動期間は3か月〜最長1年程度です。

ステップ1|企画書の作成と出版社への提案(3か月)

まずテーマとコンテンツをヒアリングし、商業出版を狙えるか、自費出版でいくかを見極めます。

そのうえで企画書を作成し、出版社へ提案・交渉します。提案先は最大5社まで。編集会議を通過すれば出版決定です。通らなかった場合は、企画を修正して再提案するか、別の出版社に持ち込みます。

企画書に何を書くかは企業出版を実現する方法は?企画書に書く12項目で詳しく解説しています。

ステップ2|原稿執筆・編集(3〜9か月)

出版が決まったら、編集者と著者で打ち合わせを行い、構成・内容・スケジュールを決めます。

経営者が自分で書くのが難しい場合は、専任ライターが担当します。ヒアリングから原稿執筆、原稿確認・修正を経て校了まで。ここが一番時間がかかる工程で、3〜9か月を見ておく必要があります。

ステップ3|印刷・装丁・発行準備

印刷と装丁の準備に入ります。タイトルと装丁については、書店で手に取られるかどうかを左右するので、PRの観点からアドバイスを行います。

企業出版で期待できること

費用をかける以上、何が返ってくるのかをはっきりさせておきましょう。

  • 経営者・企業の権威付け|「著書がある経営者」は、それだけで信用の材料になります
  • 営業ツールとしての効果|商談前に渡しておくと、説明の手間が減り、話が早く進みます
  • 採用への効果|会社の考え方を深く理解した応募者が集まります
  • 取材のきっかけになる|書籍を切り口にした著者インタビューや寄稿の依頼が入ります
  • 効果が長く続く|プレスリリースが数日で消費されるのに対し、書籍は発刊から年単位で使えます

最後の点は特に大きい。当社がPRを担当した書籍では、発刊から2年が経った時点でも著者インタビューや寄稿の依頼が続き、書籍の内容がそのまま記事として報道される状態が続いています。

書籍をブランディングの手段としてどう位置づけるかは究極の企業ブランディングとはでも書いています。

企業出版のデメリットと、期待しすぎてはいけないこと

良いことばかり書いても意味がないので、正直に書きます。

  • 費用が大きい|特に自費出版ルートでは数百万円単位の投資になります
  • 時間がかかる|早くても数か月、原稿次第で1年近くかかります
  • 経営者の時間を使う|ライターが書く場合でも、ヒアリングと原稿確認からは逃げられません
  • 企画が通るとは限らない|商業出版を狙う場合、編集会議を通過しなければ出せません

そして期待しすぎてはいけないのが、本の売上そのものです。企業出版で増刷やベストセラーを前提に投資判断をすると、まず外します。

判断の基準はシンプルで、「本が売れなくても、この投資は回収できるか」です。信用が上がって商談が決まる、採用が1人決まる、金融機関の評価が変わる。そこまで含めて計算が合うなら、出す価値があります。

失敗しないための確認ポイント

1. 商業出版か自費出版か、最初に見極める

繰り返しになりますが、ここで総額が一桁変わります。いきなり自費出版を前提に話が進む提案には、一度立ち止まってください。商業出版を狙える題材かどうかを検討したうえでの結論なのか、確認する価値があります。

商業出版が通りやすいのは、著者に他にない経歴があり、その内容が社会課題の解決につながっている場合です。出版社としても部数が見込めると判断できるからです。

2. 「出版が実現しなかった場合」の扱い

返金されるのか、されないのか。再提案は何回まで対応してもらえるのか。ここを曖昧にしたまま契約すると、後で揉めます。

3. 提案先の出版社は何社か

1社だけに持ち込んで終わりなのか、複数社に当たってもらえるのか。当社の場合は最大5社までとしています。

4. 出す前から、出した後の設計をしておく

これが一番見落とされます。本が完成してからPRを考え始めると、発刊直後という一番大事なタイミングを逃します。

書籍PRの活動計画は、完成のメドが立った時点で立てておくのが鉄則です。

出版してからが本番|書籍PR

出版後にやることは、大きく4つあります。

  • プレスリリース|新刊情報をメディアに提供する。露出先は「書評」「新刊紹介」「話題の本」といったコーナー
  • 献本(サンプリング)|リリースと書籍をセットで送り、実際に読んで判断してもらう
  • 広告出稿|全国紙の1面下段などに新刊広告を出す。出版社が費用を負担することもある
  • 店頭展開|書店でPOPを出してもらう、目立つ位置に置いてもらう

当社が担当した書籍では、発刊直後に日経新聞1面に広告を掲載し、その後に新刊リリースと献本を展開した結果、一般メディアから業界専門媒体まで書籍に関するものだけで20件以上の報道を獲得しました。Amazonの売れ筋ランキングで人事部門1位も実現しています。

具体的な進め方と事例は「出版から書籍PRまで」が成功の秘訣で詳しく解説しています。

当社の書籍出版プロデュースの進め方と料金は書籍出版プロデュースのページに記載しています。

出版を機に広報活動そのものを立て直したい場合は、依頼先の選び方から検討することになります。業務範囲と費用相場はおすすめの広報・PR代行会社14社を比較!費用相場や失敗しない選び方を解説で比較しています。

企業出版に関するよくある質問

企業出版と自費出版はどう違うのですか?

自費出版は「費用を誰が負担するか」を指す言葉、企業出版は「何のために出すか」を指す言葉です。企業出版を自費出版の形で実現することもあれば、商業出版として実現することもあります。

商業出版として通る確率はどれくらいですか?

当社がこれまでに手がけた企画では、ほぼ100%が商業出版として実現しています。これは、最初のヒアリングで「商業出版として通る企画かどうか」を見極めたうえでお受けしているためです。題材によっては、自費出版でのご提案になることもあります。

経営者に文章を書く時間がありません。それでも出せますか?

出せます。専任ライターが担当する形であれば、ヒアリングをもとに原稿を執筆し、確認と修正を経て校了まで進めます。ただし、ヒアリングと原稿確認の時間は必要です。

書籍のPRだけを依頼することはできますか?

可能です。別途お見積りとなりますが、目安は活動期間1か月あたり50万円〜です。すでに出版が決まっている、あるいは出版済みという段階でもご相談いただけます。

電子書籍だけでも効果はありますか?

費用は抑えられますが、書店での展開や新聞広告といった打ち手が使えないため、権威付けの効果は限定的になります。何を目的に出すかによって判断してください。

まとめ|総額ではなく「どのルートか」で比べる

企業出版の費用がわかりにくいのは、商業出版ルートと自費出版ルートで総額が一桁変わるのに、見積もりの表にその前提が書かれていないからです。

最後にポイントを整理します。

  • 企業出版は費用負担の方式ではなく「目的」を指す言葉
  • 商業出版として通れば制作費は出版社負担。自費出版なら数百万円〜の実費
  • 最初のヒアリングで「どちらを狙うか」を見極めることが決定的に重要
  • 「出版が実現しなかった場合」の扱いを契約前に確認する
  • 本の売上ではなく、信用・商談・採用まで含めて投資判断をする
  • 出したら終わりではない。書籍PRまで設計して初めて効果が出る

当社では企業PRの視点から、大手から専門出版社まで自社のネットワークを活用して書籍出版をご支援しています。「そもそもうちの題材で出せるのか」という段階からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
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代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人