リテーナー契約とは?PR会社の契約形態と費用の考え方・スポット依頼との違い

リテーナー契約とは?PR会社の契約形態と費用の考え方・スポット依頼との違い

リテーナー契約とは?PR会社の契約形態と費用の考え方・スポット依頼との違い

スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の野澤です。

今回は「リテーナー契約」について書きます。

PR会社から提案書や見積書を受け取って、そこで初めて「リテーナー契約」という言葉を見た。そういう方が、この記事にたどり着いていると思います。

調べてみると、M&Aの記事や人材紹介の記事ばかり出てきて、PRの話が出てこない。同じ言葉が業界によって違う意味で使われているので、混乱して当然です。

この記事では、PR業界におけるリテーナー契約とは何か、月額に何が含まれるのか、スポット依頼とどう違うのか、そして契約前に何を確認すべきかを、実際にリテーナー契約でご支援している立場から整理します。

この記事の執筆者

野澤 直人(のざわ なおひと)

株式会社ベンチャー広報 代表取締役

ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材後、海外留学関連のベンチャー企業で広報部門をゼロから立ち上げ。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業し、以来スタートアップ・ベンチャー専門で400社以上の広報を支援。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

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リテーナー契約とは?PR業界での意味

リテーナー契約とは、毎月一定の金額を支払い、継続的に業務を任せる契約形態のことです。「リテナー契約」と長音を省いて表記されることもありますが、同じものを指します。

PR業界では、PR会社に広報業務を月額で継続的に委託する契約を指します。イメージとしては、社外に経験豊富な広報担当者を1名雇用する感覚に近いです。

「retainer」はもともと「確保しておく」という意味です。仕事が発生したときに都度頼むのではなく、あらかじめ枠を押さえておく。この発想が言葉の由来です。

M&A・人材業界の「リテイナー」との違い

検索して混乱する原因がここです。同じ言葉が、業界ごとに違う場面で使われています。

  • M&A|仲介会社やFAに支払う月額の顧問料。成功報酬とは別に発生する「リテイナーフィー」を指すことが多い
  • 人材紹介|採用の成否にかかわらず着手金を支払う契約形態。完全成功報酬型と対になる概念
  • PR|広報業務そのものを月額で継続委託する契約

共通しているのは「月額で継続的に払う」という点だけで、何を買っているかはまったく違います。PR会社の見積書に書かれたリテーナー契約を、M&Aの解説記事で理解しようとすると噛み合いません。

顧問契約・アドバイザリー契約との違い

「顧問契約と何が違うのか」もよく聞かれます。

言葉の使い分けに厳密なルールはありませんが、PRの現場では次のように受け取られることが多いです。

  • 顧問・アドバイザリー|助言が中心。手は動かさない
  • リテーナー契約|助言に加えて実務そのものを代行する

ここは契約前に必ず擦り合わせてください。「アドバイスはするが、プレスリリースは自社で書いてください」なのか、「資料作成からメディアへのアプローチまでやります」なのかで、必要な社内工数がまったく変わります。

PR会社の契約形態は大きく3つ

リテーナー契約を理解するには、他の選択肢と並べるのが早いです。

1. リテーナー契約(月額固定・継続型)

毎月定額で、広報活動を継続的に任せる形です。戦略の策定から資料作成、メディアへのアプローチ、取材対応まで一連の業務が対象になります。

広報は成果が出るまでに時間がかかる活動なので、腰を据えて取り組む場合はこの形が基本になります。

2. スポット契約(単発型)

記者発表会の運営、プレスリリースの作成、調査リリースの実施など、1つの案件だけを切り出して依頼する形です。

目的がはっきりしていて期限もあるので、費用対効果は読みやすい。ただし単発なので、メディアとの関係は積み上がりません。「大きな発表が1回ある」という場合には合理的な選び方です。

スポットで依頼されることが多い記者発表会については、当日までの流れと費用の内訳を記者発表会とは?記者会見との違いと当日までの流れ・費用の目安にまとめています。

3. 成果報酬型(掲載課金)と、その注意点

掲載が取れたら課金する、という形です。一見すると発注側に有利に見えますが、注意が必要です。

まず「成果」の定義が難しい。どんな媒体でも1件は1件と数えるのか、媒体の影響力で重みを変えるのか。ここが曖昧だと、望んでいない媒体での掲載が積み上がることになります。

そしてもう一つ。報道は本来、記者が価値を判断して書くものです。掲載の確約を前提にした取引は、報道の独立性という観点から健全とはいえません。この点は覚えておいてください。

リテーナー契約の費用の考え方

ここが一番知りたいところだと思います。

月額の目安

当社の場合、リテナー契約(広報代行)の月額料金は50万円〜(税別)、契約期間は6か月〜です。活動の内容やボリュームによって変動する場合があります(たとえば関連会社や子会社の広報活動も合わせて行う場合など)。

実務の代行までは不要で、社内の担当者に伴走してほしいという場合は、コンサルティング契約という形もあります。こちらは月額25万円〜(税別)、6か月〜で、PR戦略の策定や広報実務に関するアドバイスが中心です。

それぞれの業務範囲と契約期間はリテナー契約(広報の業務委託)コンサルティング契約のページに記載しています。

一方で、大手PR会社に問い合わせたら「月額100万円で12か月契約」と提示されて諦めた、という相談は当社によく寄せられます。大企業向けの標準的な座組みだと、この水準になることが珍しくありません。

月額に含まれる業務範囲

金額よりも大事なのが「何が含まれているか」です。当社のリテナー契約の場合、月額に含まれるのは次の業務です。

  • 広報PR戦略の策定
  • キーメッセージ・PR切り口の開発(企画立案)
  • プレスリリース、企画書など各種報道用資料の作成(原則月1件まで)
  • メディアリストの作成
  • リストアップしたメディアへの個別アプローチ(電話・メール・訪問)
  • 広報PR実務に関する電話・メールでの相談受付(随時)
  • 定例ミーティング

他社の見積もりを検討している場合も、この粒度で並べて比較してみてください。同じ「月額◯◯万円」でも、資料作成が含まれるかどうか、メディアに実際にアプローチしてくれるかどうかで中身はまったく違います。

何に対して払っているのか。時間か、成果か

リテーナー契約は、稼働時間を買う契約ではありません。当社の場合も、稼働ボリュームをお約束するものではないとお伝えしています。社外に広報担当者を1名置くようなイメージで捉えていただくのが実態に近い。

「月に何時間動くのか」を気にされる方は多いのですが、広報の価値は時間数では測れません。1本の企画が通るかどうかは、かけた時間ではなく切り口の質で決まります。

ただし、丸投げになっているかどうかは見てください。定例ミーティングで何を報告しているか、メディアからどんなフィードバックが返ってきているか。ここが共有されていれば、稼働は健全です。

契約期間が6か月以上になる理由

「まず3か月試したい」というご要望はよくいただきます。気持ちはわかるのですが、広報の構造上おすすめできません。

リテナー契約の場合、1か月目はほぼ企画段階に使います。事業内容・プロダクト・経営戦略・広報課題のヒアリング、過去の報道分析と競合調査、そこから広報の目的とKPIの設定、キーメッセージとPR切り口の開発、ターゲット媒体の整理、広報計画の策定。さらに報道用基礎資料、プレスリリース、ニュースレター、メディアリストといった資料の作成。

メディアへのアプローチが始まるのは2か月目以降です。そこから取材が決まり、取材を受け、記事が出るまでにさらに時間がかかります。3か月では、成果が出る前に契約が終わってしまう。

広報の立ち上げそのものの進め方は広報の立ち上げ方を解説|ゼロから始める手順と最初の90日ロードマップで詳しく書いています。

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リテーナー契約が向いている会社・向いていない会社

どちらが優れているという話ではなく、状況の問題です。

リテーナー契約が向いているのは、こういう会社です。

  • 社内に広報担当者がいない、または未経験者がひとりで担当している
  • メディアとの関係がゼロで、これから作る必要がある
  • 発表する材料が継続的にある(新機能、導入事例、提携、調査など)
  • 将来的に広報を内製化したいが、まず型を持ち込んでほしい

実際、当社がご支援した流通業界のバーティカルSaaS企業は、BtoCからBtoBへ事業をピボットした直後で、社内にリソースがなく代表も開発に追われている状況でした。「戦略立案から実行まで一貫して任せられるPR会社を探していた」というご依頼です。これはリテーナー契約が噛み合うケースの典型です。

逆に、向いていないのはこういう場合です。

  • 大きな発表が1回あるだけで、その後しばらく材料がない →スポット契約を検討
  • 社内に経験豊富な広報がいて、実務は回っている →コンサルティング契約や個別の支援で足りることがある
  • 3か月以内に結果が必要 →広報の時間軸と合いません

内製と外注のどちらを選ぶかで迷っている段階なら、「広報を内製化すべきかPR会社に外注すべきか問題」を考えるも読んでみてください。

契約前に確認したい5つのこと

相見積もりを取っている方に、特に見てほしい項目です。

1. 担当者は誰か。営業と実働が別人になっていないか

提案の場に来た人と、契約後に動く人が違う。これはPR業界でよくある話です。

大手の場合、窓口・資料作成・メディアアプローチが分業になっていることがあります。分業には分業の良さもありますが、自社のメッセージが担当者間で劣化するリスクもある。当社の場合は「お客さまとの窓口/コンサルティング」「資料作成」「メディアアプローチ」を1人の担当が一気通貫で対応する形をとっています。

なお、担当者の指名を受け付けているかも確認しておくといいでしょう。当社では原則お受けしていません(ご希望のスタッフのリソースが空いていればアサイン可能ですが、別途指名料をいただいています)。

2. 1人の担当が何社を見ているか

これは聞きにくい質問ですが、聞いていい質問です。担当者が抱えている社数によって、自社にかけられる時間は変わります。

参考までに、当社では多くのスタッフが3〜4社程度を担当しています。

3. 中途解約と更新の条件

契約期間が6か月や12か月でも、途中で状況が変わることはあります。そのときにどうなるかは、契約前に確認してください。

当社の場合は、2か月前にご連絡いただければ契約期間中でも解約が可能です。ここが「期間内は一切解約不可」なのか「事前連絡で可能」なのかは、会社によって差が大きい部分です。

4. 「成果」をどう定義しているか

掲載本数だけで見るのか、媒体の質まで見るのか。露出の先にある事業成果(問い合わせ、採用応募、資金調達)まで見るのか。

ここを最初に擦り合わせておかないと、半年後に「掲載は増えたが、狙っていた媒体ではなかった」という不満が生まれます。KPIの設計は契約後の最初の1か月でやるべき仕事です。

どんな指標を置けばいいかは広報の効果測定とKPIの決め方で、活動KPI・成果KPI・事業KPIの3層に分けて解説しています。

5. 契約が終わったとき、自社に何が残るか

意外と見落とされるのがこれです。契約終了後、メディアとの関係やノウハウが自社に残るのか、それともゼロに戻るのか。

当社では内製化を見据えたご支援を重視しています。実際、サブスクリプションサービスを展開する企業では、広報未経験者1名でのスタートでしたが、契約後1年半を迎える頃には担当者が自走し、毎年前年を超える露出を獲得し続けるようになりました。PR会社を入れる目的は、ずっと外注し続けることではありません。

フリーランスの広報・社内採用との比較

リテーナー契約を検討している方は、たいてい他の選択肢とも比べています。

フリーランスの広報は、費用を抑えられるのが利点です。一方で、その方が持っているメディアとの関係の広さに成果が左右されます。当社にも「フリーランスのPRコンサルタントに依頼していたが、メディアへの訴求が弱く報道される媒体も量もわずかだったため、委託先を探していた」というご相談があります。PR会社の場合は社内で最新のメディアや記者の情報を常に共有しているため、保有している情報量で差が出ます。

社内で広報を採用するのは、長期的にはもっとも強い選択です。ただし採用にも時間がかかり、採用できても未経験者であれば教える人が社内にいないという問題が残ります。

現実的には、リテーナー契約で型を持ち込み、並行して社内人材を育てて内製化するという進め方が、中小・ベンチャーではもっとも噛み合うことが多いです。

各社の特徴やタイプ別の比較はPR会社のおすすめ比較!失敗しない選び方とタイプ別の特徴を専門家が解説、費用相場を含めた選び方はおすすめの広報・PR代行会社14社を比較!費用相場や失敗しない選び方を解説にまとめています。

リテーナー契約に関するよくある質問

「リテナー契約」と「リテーナー契約」は違うものですか?

同じものです。英語の retainer をどうカタカナにするかの違いで、契約内容に差はありません。当社では「リテナー契約」と表記しています。

広報コンサルティングとは何が違いますか?

リテーナー契約は実務の代行、コンサルティング契約は実務へのアドバイスが中心です。当社のコンサルティング契約の場合、相談は原則最大で週2回程度、定例ミーティングは月1回60分という形で、手を動かすのは貴社側になります。広報コンサルタントの役割については広報コンサルタントとは?仕事内容と依頼のメリット・選び方を解説で詳しく解説しています。

月額に含まれない業務はありますか?

記者発表会の運営や書籍出版プロデュースなど、単発で大きな工数が発生するものは別途のお見積りになります。報道用資料の作成も、当社の場合は原則月1件までを目安としています。

それぞれの費用の考え方は記者発表会とは?記者会見との違いと当日までの流れ・費用の目安企業出版とは?費用相場とメリット・デメリット、商業出版/自費出版との違いで解説しています。

成果が出なかった場合、料金は発生しますか?

リテーナー契約は業務を委託いただく契約なので、掲載の有無にかかわらず月額が発生します。だからこそ、契約前にKPIの考え方と、毎月どう報告するかを確認しておくことが大切です。

途中で解約できますか?

当社の場合、2か月前にご連絡いただければ契約期間中でも解約が可能です。他社を検討される場合も、ここは必ず確認してください。

まとめ|金額より「何が含まれるか」で比べる

リテーナー契約は、PR会社に広報業務を月額で継続委託する契約形態です。判断を誤りやすいのは、金額だけを横に並べてしまうときです。

最後にポイントを整理します。

  • M&Aや人材紹介の「リテイナー」とは、同じ言葉でも中身が違う
  • 契約形態はリテーナー・スポット・成果報酬の3つ。材料が継続的にあるならリテーナー
  • 見積もりは金額でなく含まれる業務の粒度で比べる
  • 1か月目は企画段階。3か月では成果が出る前に終わる
  • 担当者・担当社数・解約条件・成果の定義・終了後に残るもの、の5点を必ず確認

他社から提案を受けている段階でのご相談も歓迎しています。「その見積もりは妥当か」という聞き方で構いませんので、判断に迷っていればお気軽にどうぞ。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
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野澤直人
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代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人