「広報」と「広告」どっちが優れている?
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「広報」と「広告」どっちが優れている?

「広報」と「広告」どちらも、企業のマーケティングに必要な活動ですが、広報担当者は「広報の方が優れている」と言いがちかもしれません。ですが、実際には、広報と広告は互いに補完的な関係にあります。経営状況や期待できるマーケティングの効果を踏まえて、双方を適切に使い分けるのが順当ではないでしょうか。

広報担当者は広告を否定しがち

広報(マスコミ広報)の仕事をしている人は、広告(宣伝)のことを批判的に語ることがあります。少なくとも、広告よりも広報が優れている、という論理展開をしがちです。広報PR関連のセミナーに行くと、広報と広告の違いについて、次のように説明されたりします。

「広報」(マスコミ広報)
・お金をかけずに、マスコミを通じて情報発信できる。
・読者から高い信用、信頼を得ることができる。
・情報を発信するタイミングや内容をコントロールできない。

「広告」(宣伝)
・広告を出すのに多額のお金が必要。
・宣伝臭がするので、読者は広告の内容をあまり信用しない。
・発信する情報をコントロールできる。

これは多分に、広報側の人間(私も含めて)のポジショントークだと思います。確かに、広報が優れている面もありますが、こういう比較論は、表面的、短絡的すぎるのではないでしょうか。本質的には、広報と広告、どちらが優れているということはありません。

それぞれの長所・短所を理解した上で、その時、企業が置かれている状況や、経営課題に合わせて、使い分けるべきものです。むしろ、広報と広告はお互いを補完し合う関係と言った方が正しいと思います。

広報は「株式投資」で、広告は「銀行預金」

広報と広告を金融商品に例えると、広報=株式投資、広告=銀行預金(債券投資)でしょう。広報はハイリスク・ハイリターンです。広報担当者がいくら頑張っても、取材や報道が全く取れない=ゼロリターンのリスクがあるのが広報です。

しかし、うまくいって、例えばテレビ番組やYahoo!ニュースで効果的な報道が実現できれば、その反響は計り知れません。元本割れのリスクがある代わりに、投資したお金が何倍にもなる可能性があるという、株式投資に似ていますね。

広報は費用対効果が計りづらいとよく言われますが、その点も、投資対効果が予測しづらい株式投資と似ています。広告はローリスク・ローリターンです。広告は、一定のお金はかかりますが、自分たちが発信したいメッセージを確実に媒体に掲載できます。

その結果、爆発的な効果は期待できませんが、お金をかけただけの反響(ユーザー獲得や問い合わせ獲得)は得られるでしょう。元本保証があり、確実に金利が得られますが、そのリターンは大きくはないという、銀行預金(債券投資)に似ていますね。

広報と広告はこういう特徴の違いがあるわけですから、そもそも「広報に費用対効果を求める」という発想自体がズレているのかもしれません。使ったお金や労力に対して、確実なリターンや明確な費用対効果を期待するなら、広報ではなく、広告を選択すべきでしょう。

あとは、広報と広告、どちらか1つを選択する、という考え方が間違っています。マーケティング全体予算のうち、広報と広告の予算をどう分配するか、ポートフォリオを組むべきです。金融投資においても、株式と債券でポートフォリオを組みます。それと同じです。

広報は「弱者が強者に挑むためのマーケ戦略」

マーケティング予算の中で、広報、広告、WEBサイト、イベント、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でポートフォリオを組むべきです。これについて、異論がある方は少ないと思います。

しかし、マーケティングの全体予算が少ない場合、複数のマーケティング施策に満遍なく予算を配分することはできません。つまり、マーケ予算が潤沢な大企業はこのポートフォリオが組めますが、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップでは、それが難しいのが現実です。

そこで、ゼロリターンのリスクがあるのを承知で、大きなリターンを求めて限られたマーケティング予算の多く(あるいは全て)を広報に集中投下する、という意思決定をする場合があります。これは、予算が潤沢な大企業に、中小ベンチャー、スタートアップが挑む場合の「弱者の戦略」といえるでしょう。

「広報が先、広告が後」が原理原則

『ブランドは広告でつくれない 広告vsPR』(アル・ライズ、ローラ・ライズ著)という広報PR関連の名著があります。この本の中で著者はこう言っています。

・商品やブランドにユーザーからの信頼、信用がない段階で、広告(宣伝)を行っても効果が低い。
・だから、商品やブランドを市場に展開する初期段階においては、最初に広報PRを行い、商品やブランドにユーザーからの信頼、信用を高めるべきである。広告はその後に行えばよい。
・つまり、「広報が先、広告が後」。これがマーケティング戦略における原理原則である。

この本を読んで頂ければ、社会にまだ存在ない画期的な商品サービスを初めて世の中に出すベンチャー企業やスタートアップは、広告ではなく広報に注力すべきであるという合理的な理由がわかると思います。

こうした広報と広告について、自分なりの思索、洞察の結果、「資金が潤沢な大企業は広告中心で。資金の乏しい中小・ベンチャー企業、スタートアップは広報中心で」が私の持論となっています。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

記事の執筆者
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