「フリーランス広報」の“光と闇”
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「フリーランス広報」の“光と闇”

プロフェッショナルとして、広報の仕事を長く続ける場合、事業会社の広報担当者だけでなく、フリーランスとして独立したり、PR会社に転職したり、副業として広報の仕事をしたり、さまざまなワークスタイルが選択可能です。その中でも、フリーランスとして広報の仕事をする場合のメリット、デメリット、注意点は何でしょうか。

「フリーランス広報」へのニーズが高まっている

「広報会議」が2020年11月~12月に行った調査によると、PR会社などに広報業務を外注している企業は41.0%にのぼり、前年の37.3%を上回っています。筆者の肌感覚として、特に、ベンチャー企業やスタートアップの広報で、外注ニーズが増えている印象です。

規模の小さな会社では、広報専任を社員として1名雇用するのは負担が大きいですし、PR会社に外注すると高くなります(外注費が月80~100万円)。結果、「フリーランスで広報をしている方に、PR会社よりも安い金額で外注しよう」となるケースが多々あります。

■フリーランス広報のメリット
会社員とは異なり、時間や場所にとらわれず働けるのが一番のメリットでしょう。無駄な社内会議に参加する必要もありません。頑張ったら頑張っただけ稼げるのもフリーランスのよいところです。

筆者の知り合いのある女性は、PR会社をやめてフリーランスとして独立したら、収入が会社員時代の倍以上になったそうです。中には、フリーランスの広報として、年収1000万円以上稼ぐ方もいます。

■フリーランスの広報になるには
名刺を作って、「フリーランスの広報になりました!」と宣言すれば、誰でもすぐになれます。弁護士や税理士のように、公的な資格が必要な仕事ではないですからね。フリーランス広報として独立するのは、いくつかのパターンがあります。

・事業会社で広報担当を数年経験後、フリーランスとして独立
・PR会社に数年勤務したのちに、フリーランスとして独立
・マスコミ業界(新聞記者や放送作家など)から広報のコンサルタントに転身
・企業に所属しながら副業で広報の仕事を数年して、クライアントやノウハウの基盤を作ったのちに独立
・広報PRのノウハウを塾や講座で学んで、フリーランスとして独立

フリーランス広報が仕事を受注する方法

■友人知人から紹介してもらう(人脈での受注)
広報として独立したら、知り合いに「広報で困っている会社や個人の方がいたら、紹介してね」とお願いして回ります。これが一番、オーソドックスな受注の方法です。広報のコミュニティーに所属して、広報仲間から仕事を紹介してもらうケースもあります。

事業会社の広報から独立してフリーランスになる場合、もともと属していた企業から一部業務を請け負うというのもよくあるパターンです。

■エージェントやクラウドソーシングを利用する
最近増えている、フリーランスに仕事を紹介するエージェントに登録して、広報の仕事を紹介してもらうやり方です。ランサーズやココナラなど、クラウドソーシングでも広報の仕事は見つけられます。これらは比較的手軽ですが、利用手数料やマージンがかかるため、手取り収入が少なくなりがちです。

■SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やブログで情報発信する
TwitterやFacebook、YouTube、ブログなどで、自ら広報のノウハウを発信して、問い合わせが来るのを待ちます。受け身ではありますが、中長期的には効果が高い方法です。

■企業に直接営業する
広報外注のニーズがありそうな会社に、電話やメールで直接コンタクトして営業します。PR TIMESなどでプレスリリースを一斉配信している企業は、何らかの広報活動をしているわけですから、営業ターゲットになります。

さらにニーズが高いのは、求人サイトで広報担当者を募集している企業です。広報を社員にやらせるか、外注するか迷っているケースもありますから。ただし、この方法で仕事を取るのは大変なので、できればあまりやりたくない方法です。

フリーランス広報の“闇”

フリーランスの広報になるなら、デメリットも理解した上で判断した方がいいと思います。

■安い金額でクライアントからいいように使われる
フリーランス広報の受注金額の目安は、月額10~20万円といわれています。問題は、その金額でどんな仕事をどのくらいのボリュームやるかです。安い金額であれもこれもと、大量の仕事の依頼をしてくるクライアントもいます。

「なんか、すごく忙しいけど、全然稼げない…」ということに、ならないよう十分注意しましょう。仕事の内容もギャラ交渉も、全て自分次第です。フリーランスは会社員とは違いますから、誰もあなたを守ってくれません。

■経験不足で大きな実績もなくフリーランスになると、全然稼げない
フリーランス広報として、クライアントを満足させるだけのアウトプットを出すのは簡単ではありません。クライアントは不満があれば、すぐ契約を終了するでしょうし、値下げ交渉もしてきます。「知人の紹介で受注はできても契約が続かない」「いつも仕事がなくて困っている」「仕事があっても単価が安い」という悩みをもつフリーランス広報も実は少なくありません。

■休業補償がない
フリーランスは、自分が手を動かさないと収入が得られません。健康で元気な時はよいのですが、怪我、病気、出産、親の介護などで働けなくなったら、即、収入はゼロになります。会社員に比べると収入はかなり不安定になりますので、それは覚悟すべきでしょう。配偶者などのパートナーが会社員で安定収入があるのであれば、世帯収入として考えればよいので、この懸念点はある程度軽減されます。

■長期的なキャリア形成が難しい
基本的には、「フリーランスで広報をやる=自分がプレーヤーであり続ける」ということです。20代、30代、あるいは40代まではいいとしても、50代、60代になっても、同じ広報の実務をずっとプレーヤーとしてやり続けるって、どうなんでしょうね。これは人によって考え方が分かれるところですので、何が正しいかはわかりませんが。

フリーランス広報として成功するには(金持ち広報と貧乏広報)

■「売れっ子」になれ!
フリーランス広報は本当にピンキリです。営業しなくても口コミで仕事の依頼が常に多数あり、年収1000万円以上稼ぐ方(金持ち広報)もいれば、いつもヒマで「仕事ください~」ばかり言っている方(貧乏広報)もいます。

売れっ子のフリーランス広報は、自分から営業しなくても紹介・口コミでどんどん新規の仕事が入ります。だからクライアントに対しても強気で、自分の好きな仕事しか受けませんし(=嫌な仕事は断れる)、受注単価も高くなります。

逆に、ヒマなフリーランス広報は、単価が安い割に作業量が多いなど条件の悪い仕事でも、生活のために受けざるを得ません。長時間労働の割に全然稼げない、という悪循環に陥ります。

■結局は「広報としてのスキル」次第
では、フリーランス広報として「売れっ子」になるにはどうしたらよいのでしょうか。当たり前のことですが、広報PRのスキルが高く、どんなクライアントに対しても、一定以上のアウトプットを出し、クライアントを満足させる実力があることが大切です。クライアントを満足させられれば、契約の継続期間が長くなり、安定収入につながります。

また、満足度の高いクライアントは「このフリーランス広報さん、すごくいいよ」と、知り合いの会社の社長を紹介してくれます(逆に「あのフリーランス広報、仕事頼んだけど全然ダメで。ひどかったよ」という悪い口コミも広がりますので、注意しましょう)。

そうして、フリーランス広報としての信頼と実績が積み重なり「売れっ子」になっていくのです。

筆者からのアドバイス

最近、広報PRのノウハウを塾や講座で学んで、すぐにフリーランスとして独立する方が増えていますが、個人的にはすごく心配です。教習所を卒業したてで、ろくに公道での運転経験のない人が、お金を取って他人に自動車の運転の仕方を教えている、そんな印象を持ってしまいます。

広報は専門性の高い仕事です。講座を受ければ、あるいは資格(PRプランナーなど)を取ればすぐにできる、という簡単な仕事ではありません。本気でフリーランス広報になるなら、ぜひ、事業会社の広報なりPR会社で働くなりして、広報としての実力を身につけ、経験と実績を積んだ上で、チャレンジしてください。そうすれば、成功確率が高まります。

事業会社の広報として経験を積んだからといって、必ずしもフリーランスとして通用するわけでもありません。まずは、副業で自社以外の会社の広報の仕事をやってみて、自分の実力を試してみるものよいでしょう。

また、売れっ子のフリーランス広報になるためには、専門領域を持つことをおすすめします。IT関連のクライアントに強い、BtoB企業の広報が得意、女性誌や美容誌に強いコネクションを持っている、など。フリーランス広報は誰でもすぐになれますが、長く続けるのは簡単ではないのです。

「目の前のクライアントの満足度に、徹底的にこだわること」。結局のところ、シンプルですが、これがフリーランス広報として成功する秘訣だと思います。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

記事の執筆者
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