「ブームをつくる 人がみずから動く仕組み」殿村美樹・著

「ブームをつくる 人がみずから動く仕組み」殿村美樹・著

お世話になっております。

スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の堀北です。

今回は、広報に関するおすすめの書籍をご紹介したいと思います。

書 籍:『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』
著 者:殿村美樹 氏
発行元:集英社

著者である殿村美樹さんは大阪市に拠点を置くPR会社、TMオフィスを創業し「ひこにゃん」や「うどん県」、「佐世保バーガー」などこれまで地方PRを3000件以上手掛けてきたPRプロデューサーです。年末の風物詩として定着した「今年の漢字」の仕掛け人でもあります。

メディアのインタビューにもよく登場するので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

大手広告代理店出身で、TMオフィス創業時は巨大テーマパークや地方博といった数千万円規模の“儲かる仕事”ばかりしていましたが、1995年の阪神・淡路大震災で被災したのをきっかけに、地域の役に立ち、個人が幸せを感じるためのPRをと考え、地方や中小企業のPRに特化するようになったそうです。

【書籍の概要】
「ひこにゃん」はなぜあれほどブームになったのか?

この書籍では、ゆるキャラブームの火付け役「ひこにゃん」や「うどん県」、「今年の漢字」などがブームとなり根付くまでの舞台裏を明かしながら、時間や予算など条件が制約されたなかでどうすればPRを成功させられるかを解説しています。

読者のみなさんの多くは、地方のPR戦略のコツならあまり関係がなさそう、小さな会社がブームをつくるなんて難しそう、と思われたかもしれませんが決してそのようなことはありません。

この書籍がPRや広報に携わる方の参考になるポイントは

  • 少しの工夫で人々の認知の仕方は変わる
  • ターゲットが明確なら身近に“次の「ひこにゃん」”を発見できる

ということだと思うからです。

(1) 少しの工夫で人々の認知の仕方は変わる

日本漢字能力検定協会が行う「今年の漢字」を日本文化の中枢として世界で認められている京都の清水寺で発表したのは、「誰が発表するか」ではなく「どこで発表するか」に人々の注目を集めた方が良いと考えたからだといいます。

言葉の選び方一つで売り上げが伸びる例も紹介しています。

畳の需要を喚起したい、という全国畳産業振興会からの依頼があったときは、いま使っている畳の張り替えを毎年してもらおうと日本人の心に訴える響きを持つ「供養」という言葉を使い、畳供養を新しい風物詩として育てようとしたそうです。

(2)ターゲットが明確なら身近に“次の「ひこにゃん」”を発見できる

滋賀県の依頼で「国宝・彦根城築城400年祭」の集客のためのPRを依頼されたとき、一部の城マニア層しか興味を持ちそうにないイベント内容に頭を抱え、目にとまったのが一般公募で誕生してすでにいた「ひこにゃん」だったといいます。

観光をリードする女性客を集めるためには、母性本能に訴えかける存在が共感を呼びやすいと考えたある社会的な背景があったと語っています。

そして自分の周囲を注意深く見ていれば、一発大逆転の鍵を握る存在を発見することはできると強調しています。

また消費者個人の行動を変えるためのコツは、職場の上司・部下を説得するコミュニケーション術やプレゼン術にも共通すると書いています。

実は「今年の漢字」は当初、正式なイベント名がもう少し長いもので、協会もその名称に強くこだわっていたそうです。

しかし長すぎてメディアにはウケないと考え、ある作戦により既成事実を積み重ねて「今年の漢字」を定着させていったというエピソードを紹介しています。

クライアントに納得してもらうためのこの作戦は、提案したPR施策を反対されたときなど上司や経営陣を説得したいときにも応用できそうです。

畳供養のPRが成功する前に、あの手この手でPRプランを考えたなかでクライアントに「畳ネクタイ」を提案したが却下されたという話も出てくるのですが、トレンドにからめた小手先のアイディアだったので職人たちが反対したのは正しかったと振り返るところはコンサルタントとして興味深く感じました。

その他、

  • 大分の宇佐市が打ち出した「USA」の表記はなぜ失敗したのか
  • NHKの朝ドラ「マッサン」や「あさが来た」はなぜヒットしたのか
  • 情報が拡散し最終的に社会的なムーブメントとなる“臨界点”とは
  • いわゆる三面記事のような身近な情報がネット上で拡散しやすい理由

なども参考になるトピックかと思います。

【まとめ】
小さな会社もブームを仕掛けることはできる!

「ひこにゃん」誕生の年に滋賀県彦根市で地元紙の記者をしていた私は当時、ブームの裏にこのような仕掛け人がいることを知りませんでした。後にわかってからPRという仕事に興味をもったのが、この業界に転身したきっかけの一つでもあります。

(彦根市長を取材していたため、「保守的な彦根市ではなくPRに前向きな県からの依頼だったことがせめてもの救いだった」と殿村さんが話すのにも納得してしまいました…。)

身近な逸材を見つけて戦略的に発信することがいかに大事か、あらためて気づかされましたし、限られた予算のなかでニュースとなりうる話題作りを仕掛けることは、小さなスタートアップの企業でも可能だと思いこの書籍を皆さんにおすすめしました。

過去にお手伝いした、店舗を運営するベンチャーはニュースになる材料がなかった時期に、店舗で販売していた誰もが好きなある食べ物に目をつけてイベントを行うことで一から話題作りを行い、TVなど露出をいくつも獲得して売り上げを大きく伸ばしたという実績があります。

書籍のタイトルと矛盾しますが殿村さんは、一過性のブームで終わらせず文化として根付かせることがPRの役割といいます。彼女がPRコンサルタントやPRプランナーではなく、「PRプロデューサー」という肩書きで仕事をするのも、メディアに取り上げられ商品の購入やサービスの利用が増えたあとに、人々ができる限り長く行動を起こし続けることが大事だと考えるからだそうです。

ぜひ一度この書籍を手に取り、「永続性を生むPR」を仕掛けることを目指してみてください!

書 籍:『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』
著 者:殿村美樹 氏
発行元:集英社

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記事の執筆者
堀北 未来
堀北 未来
シニアPRコンサルタント・マネージャー

大学卒業後、地方新聞社の記者として取材や編集レイアウトを約10年間経験した後にPR業界に転身。自治体、省庁関連団体、人材コンサルティング、電子機器メーカー、証券など上場企業から中小・スタートアップ、行政まで幅広い業務を担当し、ベンチャー広報に入社。教育問題や地域活性化、働き方にからめたPRで全国メディアでの報道実績が多い。

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