広報初心者とバレる?! 新聞記者に言ってはいけない一言とは
元新聞記者が教えるダメなPR

広報初心者とバレる?! 新聞記者に言ってはいけない一言とは

前回はメディアからの印象が悪くなりやすい広報のNG行動についてご紹介いたしました。「『拡大』『増加』と言うのに根拠となる数字を公開できない」「公開前の原稿に事実の間違い以外の修正を依頼する」「ネタがないのに無理に会いたがる」の3つでしたが、記者の立場や要望を理解し、失礼のない行動を心掛けて良い関係を築きたいものですよね。

その内容に関連して今回は、筆者が新聞記者時代に言われて嫌だったことや現役記者から聞いた話をもとに、メディアにとってのNG発言についてお話したいと思います。

「他社も取材してくれました」

記者に取材提案をするときや取材が決まったあとに、聞かれてもいないのに「他社からも取材してもらった」などと言ったことはありませんでしょうか。取材が入ったことでつい嬉しくなり、他社からも注目されていることを記者に伝えた方がいいと考えてお話されるのかもしれません。

記者は、取材候補の企業がこれまでメディアにどのように取り上げられているか、事前にわかる範囲で調べていることが多いです。そこで確認するのは、信頼のおける媒体で多く紹介されている企業かどうかや、自分が取材する内容と似た記事がすでに世の中に出ていないかなどです。

メディアは他の媒体が取材していない独自のニュースを報道したいと考えており、すでに他社が同じような取材をしたと聞くと自社で取材する必要性を感じなくなります。特に新聞記者は同業他社へのライバル意識が強く、またテレビやWEB媒体で出ている内容を後追いで紹介することは記者のプライドが許さないと考える方が多くいる傾向があります。

以前、ある企業の広報担当者が全国紙の記者に取材を提案したとき、良かれと思い「今度弊社がカンブリア宮殿で取り上げられることになった」と伝えました。

電話口で記者は「他に出ている記事や放送の内容は調べたら分かる。テレビに出ることや他社に取材されたことをわざわざ言うのは記者に失礼だし、今後御社は二度と取材したくない」と腹をたてて話を聞いてもらうことができなくなったと言います。

自社が取り上げても既視感が出ないか確認するために、同じ内容のニュースを他社が記事化しそうか記者から質問をいただく場合もあります。その場合は正直に「実は〇〇で〇日頃に記事が出そう」とお伝えし、切り口や掲載時期を変えることを検討いただけると良いでしょう。

「いつ載るんですか?」

取材が無事に終わると、いつ頃に記事が掲載、公開されるのかと気になりますよね。取材に協力してもらった社員の方など社内の各所から「いつ載るの?」と聞かれると、あれだけ社内を巻き込んだのにもし載らなかったらと心配になることもあるでしょう。

取材後に必要な情報がそろわず、記者が他の取材に追われている間にお蔵入りになることも稀にあるので、記事化に向けた適切なフォローは必要です。ただ記者が原稿を書いたあとは、いつ載るかを正確に把握するのが難しい事情があります。

新聞社の場合「〇日に〇〇を発表した」などその日のニュースとして載せなければいけない「日付もの」の記事や、特定の連載やコーナーで掲載枠のめどがたっている記事をのぞいて、何日付の新聞に載るかは不確定だからです。

記者が書いた記事はデスクの元に届き、デスクのチェックが終わると出稿され、整理部などといわれる紙面のレイアウト部門に渡ります。レイアウトの絵を書いて掲載する予定で準備していても、別の大きなニュースが入ってくると翌日以降の紙面に残ってしまいます。せっかく良い写真なので紙面に余裕がある日に載せよう、と配慮するときもあります。

筆者はレイアウトの部門にも長くいましたので、記事を早く載せてほしい記者の立場を理解しつつも原稿を何日も載せられずに残して申し訳ない気持ちになることがありました。

以前、企業広報の方が取材済みの媒体に「何日ぐらいに載りそうか」と何度もしつこく尋ねてしまい、「五輪など行事が続き自分でもいつ載るのかわからないので、気長に待っていただきたい」と苦笑いされたそうです。

記者が原稿を書いたあとにどのようなステップがあるのかを理解し、記者をせかしてもあまり意味がないとわかれば何度も掲載時期を聞くようなことはないかと思います。

「誕生日は教えられません」

取材のときに記者が誕生日を聞く理由はご存じでしょうか。たまに「誕生日までは記事に載せてほしくない」「そこまでプライベートなことまで紹介されたくないので教えられない」という方がいらっしゃいますが、誕生日自体を載せるわけではありません。

社長や社員の方を記事で紹介するとき、その人が何歳かを読者に正確に伝えなければいけません。取材のときに答えた年齢が、掲載当日には変わることはよくあります。そのため誕生日をお聞きして、掲載前に年齢が変わっていないかを確認します。

ではなぜ名前だけでなく年齢を紹介するのかというと、その人の人となりを詳細にイメージしやすくするためです。読者はふだんあまり意識しないかもしれませんが、取材した人の年齢が29歳なのか30歳なのかによって報道する情報の意義も変わってしまいます。

街頭インタビューで数多くある街の声の一つとして取り上げるときや、人物が特定されないように報道しなければいけないときは「〇〇市の30代女性」などとぼかすことがあり、企業の代表など肩書きがあれば年齢は紹介しないこともしばしばあります。

ですが具体的にどのような人のコメント、言葉なのかを伝えなければいけない場合は基本的に年齢は必要な情報であることを覚えていただければと思います。

いかがでしたでしょうか。報道する側の事情がよくわかっていないために、企業の顔である広報担当者が恥をかくような発言はひかえたいですね。今回はわかりやすい例を3つ紹介しましたが、それ以外にも記者に伝えて印象が悪くなる発言はありますので、お困りの際は弊社にお問い合わせください

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記事の執筆者
堀北 未来
堀北 未来
シニアPRコンサルタント・マネージャー

大学卒業後、地方新聞社の記者として取材や編集レイアウトを約10年間経験した後にPR業界に転身。自治体、省庁関連団体、人材コンサルティング、電子機器メーカー、証券など上場企業から中小・スタートアップ、行政まで幅広い業務を担当し、ベンチャー広報に入社。教育問題や地域活性化、働き方にからめたPRで全国メディアでの報道実績が多い。

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