「伝わる文章」が書ければ、企業や人として信頼を得られる
広報PR・おすすめの一冊

「伝わる文章」が書ければ、企業や人として信頼を得られる

企業における広報は、会社の顔と言える存在です。そのため広報担当者は、正確でわかりやすい文章を書き、情報発信することが求められます。外岡秀俊氏の書籍『「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ』を読めば、文章力も向上し、仕事にも良い効果が生まれるのではないでしょうか。

おすすめ書籍

今回は、広報に携わる皆さんにおすすめの書籍を紹介します。

書籍:『「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ』
著者:外岡秀俊
発行元:朝日新聞出版

著者である外岡秀俊氏は、2011年まで朝日新聞社に在籍していたジャーナリストで、学芸部や社会部、ニューヨーク特派員などを経て2006年から東京本社の編集局長を務めていました。『地震と社会』(みすず書房)、『情報のさばき方――新聞記者の実践ヒント』『震災と原発 国家の過ち 文学で読み解く「3・11」』(ともに朝日新書)などの著書があります。大学在学中に書いた小説で文藝賞を受賞したようです。

美しい文章より、正確でわかりやすい文章を

筆者はもともと新聞社で記者や編集レイアウトの仕事をしていたのですが、一般紙の記事は小学生からお年寄りまで誰でも理解できるように書くのが鉄則です。「この書き方で、誰が読んでもすぐに理解できるだろうか」「この表現は誤解を生まないだろうか」。たった10字×30行の短いお知らせ記事でも、100行のルポでも、言葉を選ぶときは慎重でした。

広報PRパーソンの皆さんであれば、資料作成やメール、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、公私ともに文章を書く機会は多いと思いますが、いかにわかりやすく相手に伝わる文章で書くかというのは、どのような仕事でも意識した方が良いのではないでしょうか。

ましてや広報は、会社の顔です。文学的なセンスは必要ありませんが、広報担当者が書く文章の日本語が間違っていたり、伝わりにくかったりすると、企業としての信頼が揺らぎ、記者は取材をしていい会社かどうか不安になってしまうでしょう。言葉の選び方には、その人の性格や仕事のセンスが表れるともいわれるので、基礎的なスキルとして、できるだけ文章力を磨いておきたいところです。

この書籍では、文章には「正確さ」「わかりやすさ」「美しさ」の3つの要素があるといいます。美しい文章より、正確でわかりやすい文章を書くことを目指し、募集で集まった中学生から高齢者まで、幅広い年代の文章を添削する形で技法上のポイントを紹介しています。

よくある日本語の間違いや表記のルールを並べた基礎編に加えて、構成や山場のつくり方に切り込む応用編、結びの余韻や文章のリズム感といった高度なアドバイスをまとめた実践編と続きます。

書き方のコツ(1)「接続詞を省く」

本稿では、基礎編のなかで特に印象に残った書き方のコツを3つ紹介したいと思います。1つ目は「接続詞を省く」です。

先日ある寄稿記事を添削していたとき、「しかし~」「たしかに~」「とはいえ~」「だが~」と一文ごとに接続詞が使われていました。前の文章の否定や強調が繰り返されて、内容が頭に入ってきにくく、そのときは最低限必要なところ以外は接続詞を削除し書き方を変えました。

筆者の外岡さんも「接続詞の多くは省くことができ、省いた方が文章は引き締まる」といいます。

<例文>
以前はオフィスで従業員と顔を合わせて働くのが当たり前だった。でも今はほぼ毎日自宅で働いている。

<修正後>
以前はオフィスで従業員と顔を合わせて働くのが当たり前だった。今はほぼ毎日自宅で働いている。

修正後の文章に「でも」はなくても意味が通り、すっきりと読めるのではないでしょうか。

書き方のコツ(2)「符号の使い方を工夫する」

2つ目のコツは、「符号の使い方を工夫する」です。意外と知られていませんが、新聞などでは「」(カギカッコ)を、いわゆる○○(実はそうではない、正確な表記ではない)という意味で使います。

「働き方改革関連法」は略称ですが、正式名称の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」だと長くて読者もわかりにくいため、いわゆる働き方改革関連法という意味で、カギカッコを使用しているのです。

プレスリリースの見出しを短くキャッチーにしたいとき、正確な表記ではないがわかりやすい言葉を使いたいときも、「」を使うことをおすすめします。

客観的な事実かどうかわからないことを、誰かのコメントとして「」でくくり紹介することで、事実ではない場合も逃げることができます。もし自社と共同でリリースを出す取引先企業が「業界初の取り組み」「国内初」と言っていてもそれが正しいか確信がもてない場合は、

A社によると「業界初の取り組み」という。

と書けば、あくまでA社が言っていることだというニュアンスになります。

筆者は「…」「!」といった符号を多用すると、書き手の思いが先にたち、読み手をひるませてしまうことがあるため、できるだけ避けた方が良いともアドバイスしています。

書き方のコツ(3)「重言やまわりくどい表現を避ける」

「頭痛が痛い」「馬から落馬」は、極端な重言の例としてよく使われます。では次の文章はどうでしょうか?

日本のトップはこれからの日本社会の向かうべき方向性を示すことができない。

「向かうべき」と「方向性」には同じ意味が含まれていることに気づきましたでしょうか。「方向性」という言葉が「向かう」という要素を含んでいます。

日本のトップはこれからの日本社会の方向性を示すことができない。

このように「向かうべき」を省略することで、文章をすっきりと読みやすくできます。

重言ではなくても、同じ意味の表現が重なり、まわりくどい印象になることもあります。

私は被災地にはおらず、実際に震災を経験していない。

この文章では「被災地にいなかった」と書いている時点で、震災を現地で経験していないことがわかります。2つの文章を並べて意味があるのは「被災地にはいなかったが、震災を経験した」か、「被災地にいたが、震災は経験しなかった」のどちらかです。

私は実際には震災を経験していない。

これだけで意味は足りますし、くどさがなくなります。

企業として、人として信頼を得るために文章力を磨こう!

筆者が新聞記者になって初めて記事を書いたときは、10字×40行ほどの執筆に4時間以上かかったのを覚えています。

追加取材を繰り返していたので時間がかかってしまったのもありますが、何がニュースで、何から書けばいいのかが、頭の中で理解、整理できなかったことも要因です(ちなみに行政のニュースで、「住民の提案をまちづくり計画に反映するための100人委員会を○○町が設置」という記事でした)。

デスクからは修正どころではないレベルで手が入り、最終的に自分が書いた文章の原型はほぼなくなっていました。

記者時代、報道用資料にあきらかな誤植が目立つ企業は、取材を避けるようにしていましたし、文章がわかりにくかったり日本語の使い方に誤りがあったりするような場合も、その企業が正確な情報を発信しているか不安になり、印象は悪くなりました。

正確でわかりやすい文章を書けるようになれば、相手の誤解を生んだりネガティブな印象を与えたりすることなく、企業として、そして人として信頼を得ることができるのではないでしょうか。ぜひ皆さんもこの書籍をヒントに、書き方の実践を積んでください!

書籍:『「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ』
著者:外岡秀俊
発行元:朝日新聞出版

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記事の執筆者
堀北 未来
堀北 未来
シニアPRコンサルタント・マネージャー

大学卒業後、地方新聞社の記者として取材や編集レイアウトを約10年間経験した後にPR業界に転身。自治体、省庁関連団体、人材コンサルティング、電子機器メーカー、証券など上場企業から中小・スタートアップ、行政まで幅広い業務を担当し、ベンチャー広報に入社。教育問題や地域活性化、働き方にからめたPRで全国メディアでの報道実績が多い。

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