DX時代の「謝罪会見」
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DX時代の「謝罪会見」

世間の耳目を集めていた「マコなり社長の炎上騒動」。2021年9月30日、マコなり社長自身が謝罪動画を投稿し、YouTube活動停止を宣言することで、騒動の幕引きを図ったようです。ただ、PR(パブリック・リレーションズ)の観点では、こうした対応で、ステークホルダーとの関係性が維持、修復できるのか疑問があります。

従来は記者会見での謝罪が当たり前だった

以前、「『マコなり社長の炎上』から広報視点で学ぶべきこと」という記事で取り上げた「マコなり社長の炎上騒動」ですが、2021年9月30日に自身のYouTubeチャンネルに謝罪動画をアップし、併せてYouTube活動の無期限停止を発表しました。

■マコなり社長の動画「今後の活動について大切なお知らせ」

これはまさに、「DX時代の謝罪会見」といえるものです。企業が不祥事を起こした場合、今までは、マスコミを集めて記者会見を行うことが普通でした。これからは、記者会見の代わりに、謝罪動画をアップするケースが増えるのかしれません。

ここでは、まず前提として「記者会見」と「謝罪動画」には本質的な違いがあることを押さえておきましょう。記者会見の対象はあくまでマスコミです。つまり、企業はマスコミを経由して、生活者や社会とコミュニケーションを取ります。

一方、謝罪動画は、動画を通じた生活者との直接的なコミュニケーションです。「謝罪動画」という危機管理手法には、対応する企業側に多くのメリットがあります。1つは、動画で発表するメッセージを、十分作り込めるということです。

動画は事前録画ですから、リハーサルと収録を何度も繰り返し、ベストな動画をアップできます。記者会見のように、ライブ中継の一発勝負ではこうはいきません。謝罪動画の場合は、質疑応答をしなくてよいという点も大きなメリットでしょう。

PR視点で見ると「謝罪動画」に大きな課題

事前に想定問答をいくら準備しても、記者会見本番の質疑応答で適切な対応をするというのは至難の業。動画の場合、YouTubeのコメント欄に、ネガティブなコメントが書かれるリスクはあるものの、これは運営側が事前チェックをして、表示するコメントのコントロールが可能です。

このように、「謝罪動画」という手法は、主張したいことを一方的に伝えられ、直接的な反論を一切受け付けないという、不祥事を起こした企業側にとって、非常に都合のよいやり方であることがわかります。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の炎上対策であれば、これが正解かもしれません。

しかし、PR(パブリック・リレーションズ)という視点で見た場合、どうでしょうか。パブリック・リレーションズはステークホルダー(生活者、顧客、社員、取引先、株主、地域社会など)と良好な関係を作る活動のことです。

そこで重要なのは、双方向のコミュニケーションを行い、信頼関係を構築することにほかなりません。動画で自分が言いたいことを一方的に伝えて、質疑応答や反論を受け付けないのは、誠意ある対応とは思えません。これが「謝罪動画」という手法における最大の問題点だと、筆者は考えています。皆さんはどう思われますか?

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

記事の執筆者
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